抄録
当施設で15年間に三尖弁置換を行った35例中機械弁を用いたI群, 20例と生体弁を用いたII群, 15例の臨床成績を比較検討した。I群は男10例, 女10例で平均年齢は40.8歳, II群は男9例, 女6例で平均年齢は33.7歳であった。弁はI群はBjork-Shiley弁が3個, SJM弁17個, II群は異種大動脈弁9個, 牛心膜弁6個であった。手術死亡はI群がDICと敗血症が各1例で, II群でLOSで2例を失った。遠隔死はI群の4例に認め脳梗塞2例, 多臓器不全1例, 置換弁心内膜炎1例であった。術後14年の実測生存率はI群が66.3±31.3%, II群が86.7±8.8%であった。三尖弁位人工弁に起因した合併症は置換弁心内膜炎をI群の2例(0.2%/患者・月), 血栓弁をI群の1例(0.1%/患者・月), 人工弁機能不全をII群の1例に(0.08%/患者・年)に認めた。II群の1例に分娩例が存在した。機械弁, 生体弁とも三尖弁置換の遠隔成績は良好で, 生体弁は抗血栓性も高く左心系に比し耐久性も期待できる。