1989 年 18 巻 2 号 p. 805-808
1980年5月より1988年6月までの9年1カ月の間に624個のSt. Jude Medical弁(SJM弁)を用いて人工弁置換を行った。そのうち急性期55例、慢性期75例を対象に各種指標を用い、溶血の程度について検討した。僧帽弁置換術(MVR)についてはBjork-Shiley弁(BS弁)、Carpentier-Edwards弁(CE弁)と比較した。また同期間に12例の急性期溶血性貧血を認め、これらに関して溶血の増強および予後を左右する因子の検討を行った。1. SJM弁はBS弁、CE弁と比べ急性期にLDHが高値を示し、12例の溶血性貧血を認め6例を重症性溶血性黄疸にて失った。2. 慢性期に臨床上問題となる溶血はなかった。3. 二弁置換は単弁置換に比べ急性期および慢性期にLDHが高値を示した。4. 溶血増強因子として大量輸血、残存大動脈弁閉鎖不全、弁縫着方向、などが考えられた。5. 術前ICG15分値は溶血の予後を左右する因子で特に20%以上の例は予後不良であった。