人工臓器
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エホバの証人派信者に対する体外循環の臨床的検討
幕内 晴朗田中 公啓松永 仁岡部 英男川内 基裕関口 昭彦進藤 剛毅古瀬 彰
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1989 年 18 巻 2 号 p. 873-876

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抄録

最近13年間に17例の「エホバの証人派」信者に対する無輸血開心術を行った。年令は6才から51才, 男女比は3:14で, 成人例は全て女性であった。体重は21.5~51.0kg, 術前Ht値は35.1~53.7%であった。使用した人工肺は気泡型13例, 膜型4例で, 体外循環時間は死亡例(340分)を除くと最長222分であり, 体外循環中の最低Ht値は18~31%であった。術前後における体重増加率は-0.8~+9.6%と開きが大きく, 体外循環時間とは正の相関が認められたが, 最低Ht値や希釈率とは相関しなかった。二弁置換術の一例は不十分な心筋保護により心蘇生が得られず台上死したが, 他は全例生存した。Ht値は術後除々に低下し, 2~14日で最低(16.0~32.6%)となり, 以後上昇に転じた。術後24時間の胸部ドレーンの排液量は5.5~25.6ml/kgであり, 内2例に再開創・止血を行った。膜型肺の使用, 術中Cell-Saverの使用, 術後自己血返血システムの併用および術後出血に対する再手術の迅速な決断が無輸血手術の成功に委要と考えられた。

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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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