抄録
Iloprostの体外循環中の血小板保護効果について成人無血充填体外循環開心術症例13例を対象に、1群Iloprost非投与群5例とII群投与群8例とに分けて検討した。IloprostはHeparin投与10分前に2ng/kg/minで開始し、体外循環終了時まで持続投与を行ない、血小板系各指標、凝固線溶系因子、溶血度指標について経時的測定を行なった。Iloprost投与によりHeparin投与後の血小板活性化を充分に抑制し得なかったものの、20μM ADPに対する凝集能は抑制された。血小板数はI群は体外循環中減少傾向を示したのに対し、II群では体外循環終了直前まで低下傾向が認められず、30分値ではI群80.2±13.7、II群99.7±5.7%とII群が有意に高値を保った。体外循環中のβTG、PF4の上昇はIloprost投与により有意に抑制された。凝固線溶系に及ぼす影響は明らかにし得なかった。以上により2ng/kg/minのIloprostの持続投与は体外循環中の血小板の量的保護、血小板放出反応制止に有用であると結論された。