1990 年 19 巻 1 号 p. 186-189
人工心肺よりの離脱や補助循環の適応と離脱は血行動態パラメーターを目安に試行錯誤を繰り返しながら行われているが、これらの値の信頼性、予測性には問題があり新しい視点の導入が期待されている。人工心肺離脱時の、V5誘導心電図QRS波形の臨床的観察によりQRS波形の最初のポテンシャルから30-50msecでのR波高は徐々に増高し左心室自由壁の伝導性、収縮性の回復を反映すると思われた。体外循環で実験的に作成したnormothermia, 45分global ischemiaによる心不全犬モデルでも同様な変化を確認した。人工心肺離脱難渋症例にはV5誘導にてR波高が回復せず深いS波及びQRS時間の延長の見られる例が多かった。過去10間の開心術症例のうち人工心肺離脱難渋例は137例(5.8%)でその内23例(0.97%)にVADの適応の可能性があると思われV5胸部誘導心電図はその適応の決定に意義があると考えられる。