1990 年 19 巻 1 号 p. 190-195
肺循環における定常流が肺循環動態, 肺機能, 及び肺水腫の発生に及ぼす影響に関しては, これまで明らかにされていない。雑種犬を用いて定常流の肺循環, 拍動流の体循環モデルを作成した。右心房, 右心室に脱血カニュレを挿入, 肺動脈主幹部を結紮した。送血カニュレを肺動脈結紮部末梢に挿入した。これらを遠心ポンプに(定常流群), 又は拍動型ポンプに(拍動流群)接続した。体循環は自然心の自然拍動の左心室によって維持された。【結果】a. 肺血管外水分量の変動:定常流群ではバイパス前値と比べて有意な増加がみられ, その最高値は2.00±0.35であった。一方拍動流群では有意な変動はみられなかった。b. 血液ガスの変動:両群間で有意差はなかった。c. PAP, LAP, CO, 肺毛細血管静水圧PmV:両群間には有意差はなかった。d. 膠質浸透圧(COP)の変動:両群間で有意差はなかった。e. 光学顕微鏡像:どの標本も肺胞水腫はみられなかったが, 定常流群は血管周囲間質浮腫及びリンパ管の拡張が著明であった。