1990 年 19 巻 1 号 p. 201-204
当施設において下行胸部大動脈手術の補助手段として用いた部分体外循環(ローラーポンプ使用)症例と左心バイパス(遠心ポンプとヘパリンコーティングチューブ使用)症例において, 術中術後の出血性因子について比較検討した。対象症例は38例で, 部分体外循環は28例に左心バイパスは10例に行なった。出血による術中術後合併症は部分体外循環群(FF群)で5例(17.9%)うち2例が出血で術中死, 2例が肺内出血にて病院死した。一方, 左心バイパス群(LH群)では肺内出血を1例(10.0%)に認めたが死亡例はなかった。術後の出血量を比較するとFF群で平均1244ml, LH群で919mlとLH群で少ない傾向であった。また術後血小板の最低値はFF群で平均7.1×104/mm3, LH群で12.6×104/mm3とLH群で軽度の減少にとどまっており, 術後出血量の減少の一因であると考えられた。以上より遠心ポンプを用いた左心バイパス法は術中術後の致死的な出血性合併症を軽減させる有効な補助手段であるといえる。