1990 年 19 巻 1 号 p. 294-297
1984年10月より1989年5月までに、中心開放型二葉弁であるDuromedics弁(以下DM弁)とSt. Jude Medical弁(以下SJM弁)による単独僧帽弁置換術84例を対象に、両人工弁の手術成績及び遠隔成績を比較検討したので報告した。術後30日以内の早期死は4例(4.8%)で、遠隔期死亡は6例であった。早期死を除く術後4年の実測生存率はDM弁90.3%、SJM弁87.4%で両弁間に有意差はなく、全体で89.6%と良好な結果を得た。血栓塞栓症は、5例(2.9%/患者・年)に認め、術後4年でのevent-free rateは、DM弁91.7%、SJM弁86.5%、全体90.2%で、SJM弁に血栓塞栓症が多い傾向を認めた。また、3例のDM弁に血栓弁の発症(2.4%/患者・年)を認めた。不完全な抗凝血薬療法が上記合併症の発症に関与していると思われたが、遠隔成績向上のためには、厳重な抗凝血薬法が必要である。