1990 年 19 巻 1 号 p. 319-322
臨床用補助人工心臓(VAD)を開発するにあたり、使用される人工弁の特性が、システムとしてのVAD全体に与える影響は極めて大きい。そこで、VADでの使用を前提とし、あらたにボール弁の開発を行ない、その流体力学的特性を傾斜型ディスク弁(Björk-Shiley弁)と比較検討を行なった。トレーサ法による流れの可視化写真から、画像処理による定量的解析を行なった訳であるが、VAD駆動上特に問題となる低流量での流れに焦点をあて、流速ベクトル、流線形状、ずり速度、V2-分布について解析を行なった。その結果、ディスク弁では低流量下でmajor orifice側に流れが集中し、minor orifice側の流速が極端に低下するのに対して、ボール弁では流れの局所的な集中は起こらず、弁後方の流れも層流状態がよく保たれていることが観察された。これらの点から、今回解析を行なったボール弁は、低流量下での特性が特に要求されるVADの人工弁として、流体力学的に優れたものであると判断された。