体外式の補助心臓(VAD)の汎用化を目指した人工弁として、プラスチック製のボール弁を検討した。この弁はコネクター内蔵型にして生産性と抗血栓性の改善を図った。ポリカーボネート(P. C.)製コネクターにシリコーンボールを組み込んだ弁は同口径のBjörk-Shiley(B-S)弁とほぼ同等の流量特性を示した。同弁をサック型VADに用い、非抗凝固療法下で23例のヤギ実験を行なった結果、弁室内部の血栓付着は皆無であった。溶血性についても血漿遊離ヘモグロビン、血清LDHとも術前値と同じレベルであった。模擬循環回路を用いた耐久性試験は、100bpm×13ケ月目で特に異常は無く、更に継続している。また、弁の閉鎖音はB-S弁に比べて著しく静かになった。同弁は成形と組み立ての方法が簡素化され、一方で従来の移植用から流用されて来た弁と比較して抗血栓性で有意な差を認め、コネクター内蔵弁の有用性を示した。