抄録
下行大動脈遮断中の補助循環として、血液酸素化装置は用いず、遠心式血液ポンプを使用し、静脈血を還流させるveno-arterial bypass法を行い、術後の臓器障害等について実験的に検討を行った。雑種成犬を用い、veno-arterial bypassを10例(V-A群)、この対照に左心バイパスを4例(A-A群)に行った。大動脈遮断は2時間行い、中枢側と末梢側の動脈圧、血液ガス、術前後のトランスアミナーゼ、尿素窒素、クレアチニン、CPK、LDHを経時的に測定した。術後1~2週間後に犠牲死せしめ、肝、腎の組織について塞栓の有無を検索した。
V-A群の送血血液のPaO2、酸素飽和度はA-A群に比べ著明に低値を示したが、術後に対麻痺等の合併症を発生したものはなく、術後の血清生化学検査では両群間に有意差は認めず、また組織学的に明らかな塞栓を有するものもなかった。