人工臓器
Online ISSN : 1883-6097
Print ISSN : 0300-0818
ISSN-L : 0300-0818
アシアロ糖タンパク質モデル基質上でのラット肝細胞の多層集合体形成
―ハイブリッド型人工肝臓をめざして―
戸辺 成四郎武井 由香真栄田 篤赤池 敏宏小林 一清
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 19 巻 3 号 p. 1156-1160

詳細
抄録

アシアロ糖タンパク質モデルとしての人工基質材料(PVLA)上の培養ラット肝細胞に、無血清下でEGFなどの成長因子を加えると、細胞は球状接着形態を保持したまま、互いに引き合い移動を開始し、48時間以内に顕著な多層集合体(Multilayer Aggregation)を形成した。この多層集合体形成を誘発させるためには成長因子の存在に加え、Caイオンの存在が必須の条件となる。この多層集合体の形成は、蒔き込み細胞数および成長因子の添加濃度に依存し、コラーゲン合成阻止剤であるcis-hydroxyprolineにより添加濃度依存的に抑制された。PVLA上の多層集合体は、組織学的にも細胞間マトリックスを有した三次元的生着形態を示し、長期間にわたって基質上に固定された。また、集合体を形成した培養肝細胞はアルブミン合成分泌能などの特異的機能を長期間にわたって維持した。この人工基質材料であるPVLA上での肝細胞三次元培養系は、ハイブリッド型人工肝臓の確立に向け非常に有用なモデルになり得るものと考える。

著者関連情報
© 一般社団法人 日本人工臓器学会
前の記事 次の記事
feedback
Top