1990 年 19 巻 3 号 p. 1169-1172
人工食道置換術後の合併症である感染、縫合不全、また、逸脱やその後の狭窄を回避するために、我々は、自己の食道粘膜の再生による食道再建術を試みている。つまり、管状にしたシリコーンの外側をコラーゲンで被覆した人工食道を用いて食道置換術を行い、術後は経口摂取を行わずにIVHによって管理した。これによると5cmの人工食道置換術後、3~4週間で自己の食道粘膜上皮の再生によって内腔が被覆された新隼食道が完成した。今回、新生食道の上皮化の期間を短縮させることを目的として、自己の口腔粘膜を10日間培養増殖させ、人工食道置換術時に人工食道のコラーゲン層内に注入播種したところ、術後の合併症もなく、術後1週間目に新生食道が形成され、術後2週間目には新生食道内腔の粘膜上皮が完成し、新生食道の形成時間を短縮することができた。また、電顕(TEM)的にも新生食道粘膜下層の線維芽細胞において粗面小胞体およびコラーゲン線維の増生が顕著に認められた。