抄録
患児の成長に合わせて徐々に口径が太くなり, 成長してゆく人工血管の開発を行ない, 動物実験にて長期例の経過を観察し, 臨床応用への可能性を検討した。素材にヒト大伏在静脈を用い, 浸透圧と超音波処理して膠原線維および弾性線維からなる管を作成した。これを親水性エポキシ化合物(デナコール)で架橋し, 外側を太い口径のポリエステルメッシュチューブで覆った。15頭の小犬胸部下行大動脈に内径4mm, 長さ3.5~4cmの人工血管を植え込み, 1年後に内径9.5mmに成長するのを確認した。成長後の長期例8頭の観察では, 2年11ヶ月後も期待した口径を維持し, 動脈瘤様変化が生じていないこと, および石灰化などの, 乳幼児へ植え込んだ生体由来材料を用いた人主臓器に生じやすい変性が全く生じていないこと等を明らかにした。この結果臨床応用上からみて問題がないことが明らかとなった。