抄録
内脛4mm以下の小口径人工血管を開発するために、イヌ自家静脈内皮細胞をseedするハイブリッド人工血管の移植実験を行った。超極細ポリエステル繊維にて作成した、内径4mm長さ10cmの人工血管に、filtration法にて内皮細胞をtrapさせることにより植え付け、細胞を用いないコントロールとともにイヌ頸動脈へ長さ6cm移植した。2週間後の回収時には、対照群では8本全例が閉塞したのに対し、seed群では、移植直後に閉塞した1本をのぞく7本中3本が開存していた。移植前の組織所見では、内皮細胞はポリエステル繊維間に生着していたが、回収時開存例では、グラフト吻合部のみならず中央部でも内腔面で敷石状の一層構造がみられた。このfiltration法と超極細ポリエステル繊維を用いることにより、内皮細胞seedの操作が単純化し、生着率も高くなつた。また、内皮細胞は面を形成する前に植え付けられても、抗血栓性を示し、in vivoで一層構造を形成することが判明した。