無機リンが透析膜を透過する際に受ける電気的影響について検討するため、溶液のイオン強度を変化させて無機リンの溶質透過係数を測定した。NaClやKClを加えてイオン強度を変化させた32P-Na2HPO4水溶液(放射量185GBq/m3、無機リン濃度3.33mEq/l)を中空糸透析膜一本に充填して一定時間透析実験を行い、中空糸内の残存溶質濃度から溶質透過係数を算出した。透析液には試験溶液と同じイオン強度のNaClあるいはKClの水溶液を用いた。再生セルロース膜、PMMA膜、いずれの膜の場合も溶液中のイオン強度が大きいほど、また同じイオン強度では対イオンの移動度が大きいほど、得られた溶質透過係数は大きかった。またT. M. S. 理論に基づいて無機リンの膜透過性を解析した結果、無機リンの膜透過では、膜の荷電状態のみならず、膜構造も考慮しなければならないことが明らかになった。