1991 年 20 巻 3 号 p. 1134-1137
新生児を対象とした拍動流ECMO装置を試作し, その有用性について検討した。本装置は, 従来の定常流V-AバイパスECMO回路の動脈側に, 空気駆動バルーンを挿入したもので, 拡張期カウンターパルセイシヨンによる心後負荷の軽減, 末梢循環の改善を目的としたものである。対象は体重2.0-4.9kg(平均3.1kg)の子犬8頭で1-2時間の定常流ECMOを行った後, さらに拍動流ECMOを1-2時間行い, それぞれのモードでの最高血圧, 脈圧, Tension Time Index(TTI), Endocardial Viability Ratio(EVR), 尿量, 腎血流量を比較検討した。なおECMOはいずれもV-Aバイパスで行い, 流量は50-100ml/kg/min(平均87ml/kg/min)であった。最高血圧, 脈圧は拍動流で有意に高かった。TTIは有意の差はなく, EVRは拍動流で有意に高値であった。平均尿量, 腎血流量は拍動流で有意に高値を呈した。以上より拍動流ECMOは定常流ECMOに比べ, 心筋の酸素代謝の改善および腎機能の維持に有用と考えられた。