抄録
ポリプロピレン製人工心肺用血液濃縮器(ASA800)を体外循環(以下CPB)中使用し、循環血液の過剰希釈の防止を試みた。CPB中除水はHt20%以下になった症例、あるいは大量の心筋保護液の混入が予測される症例に対し行い、CPB中除水群とし、CPB中除水を行わなかった群をCPB中非除水群とし比較した。CPB中除水群は30例中16例で平均92.6±40.7分使用し、1885.5±914.1mlの除水を行った。これにより術中T.Pが一過性には3.4mg/dl(Ht16.5%)にまで下った症例もあったが、概ね4.5mg/dl(Ht20%)以上に保てた。またCPB後の血液成分はCPB中の除水のため、全体に高値を取る傾向にあるが、CPB中除水群とCPB中非除水群の間に有意の差はなかった。さらに、CPB残留血の濃縮時は、poreの目詰まりの為と思われる回路圧の若干の上昇と濃縮率の差を見たが、両者の精製された血液成分に有意差はなかった。これらよりSAS800は、CPB中から後にまで有用な人工心肺用濃縮器であると思われる。