補助人工心臓(VAD)は、重症心不全の治療法として、臨床的評価を受けつつあるが、量産化に対応し難い、高価格であるという問題が残されている。われわれはこれらの問題を解決するために、VADを本体と送脱血カニューレ及び人工弁付コネクタにパーツ化し、万一臨床例で不都合が生じた場合、その部分のみ交換し得て、しかも量産化に適した、より実用的なVADの開発を試みた。人工弁はBjörk-Shiley弁(BS弁)と今回試作したシリコンボール弁(SB弁)を用い、模擬循環回路と22頭の成山羊を用いた動物実験で評価を行った。以上の結果、われわれのパーツ化した人工心臓は安定した水力学的特性と耐久性及び抗血栓性を持つ普及型臨床用VADとして充分に臨床応用可能と判断された。またVADのパーツ化は、それぞれのデザイン・材料等の選択改良を独立して行えるため、量産化と経費削減に適し、しかも科学技術進歩に対応し得るシステムとして大きな意義があると思われた。