1991 年 20 巻 3 号 p. 699-704
1986年以来東京大学医用電子研究施設で井街らは、胸腔内埋込型人工心臓の開発に着手し、ポンプの設計試作、動物実験による評価を行ってきた。その結果、試作した人工心臓ポンプはヤギの胸腔内によくフィットし十分な拍出能力を示した。しかし動物実験では感染や、血栓形成などの問題に加えて、手術中のポンプ装着の困難さが指摘された。われわれはこうした問題点を踏まえて、完全埋込型人工心臓ポンプを改良し、それにともない装着時の手術手技にも改良を加えた。本研究では、東大型埋込型完全人工心臓の改良点と装着手術時の技術的要点を提示する。ヤギを用いた動物実験による評価では、心臓移植の手技を用いて改良型ポンプを簡便に3例のヤギに装着することが出来た。