抄録
教室における11例の補助人工心臓(VAD)装着例のうち, VADから離脱できなかった3例と離脱後遠隔死した4例の反省から, VAD適応のタイミングと適切な駆動条件の設定に再検討が求められた。開心術後のVAD適応時における自己心の左室圧容積線図の有用性を, リニアアクチュエーター式人工心臓を用いた成山羊の左心補助(LVAD)モデルから検討した。このモデルにおいて, コンダクタンスカテーテルを用い自己心の左室圧容積線図を描出し, VADのコントローラーに描出される血液ポンプの圧容積線図と同時記録した。大動脈部分遮断によって後負荷を上昇させながら得られる左室圧容積線図からVADの適応或は離脱を考慮すべき自己心の前負荷効果と後負荷効果が定量的に評価された,またVAD駆動中の自己心の拍出特性, 流入弁と流出弁の開閉もまた自己心の圧容積線図によって得られた。自己心の心室圧容積線図は, 開心術後のVADの適応・離脱の決定, 適切な駆動条件設定に有用と思われた。