1991 年 20 巻 3 号 p. 746-751
適切な補助循環法をより安全で効率的に実施するため、補助人工心臓(VAS)とIABPの両方を駆動できる多機能補助循環駆動装置を開発し、評価を行った。また本装置には、LVASからIABPへの円滑な離脱を行う目的で、新たに考案した心電同期交互駆動法(ASD)を搭載した。ASDは、LVASとIABPの1対1の交互駆動から、自己心の回復に従い徐々にIABPの拍数を増やしつつバイパス流量を減らして、自己心に急激な負担をかけずにLVASより離脱せしめる方法である。模擬循環回路及び動物実験での検討で、本装置はLVASあるいはIABP駆動装置として従来機種と同等以上の基本性能を有し、またASDもLVASとIABPの能力格差を埋める力法として有効であることが確認された。本装置を巨大左室瘤切除後の62歳男性患者のLVASからの離脱に適用したが、ASDにより循環動態を悪化させる事なくバイパス流量を減らし得た。本装置は円滑な補助循環の運用を可能にし、救命率向上に寄与すると考える。