抄録
従来から開発してきたリニアアクチュエータを用いたエレクトロハイドローリック方式補助人工心臓システムの駆動性能を、成山羊4頭(54~68kg)を用いた慢性実験により評価した。併せて新たに開発した吸引圧自動調節機構(ANPC)の心房壁の吸い付きを防止する効果を検討した。血液ポンプの抗血栓性の問題で、術後5日目に実験を中止せざるを得なかった1頭を除いて、実験動物の血行動態は良好に維持された。4頭での最大バイパス流量は5.8L/minであり、21~42日間充分な流量を安定して維持する駆動性能を示した。ANPCを使用しなかった成山羊ではアクチュエータの吸引により左房圧は、瞬時圧で最大-80mmHgの陰圧を示したが、ANPCの使用により-10mmHgに維持された。またANPCを使用した実験動物の左房内壁には吸い付きの所見を認めなかった。ANPCにより心房壁の吸い付きは防止され、改良された本システムは長期携帯可能な補助人工心臓システムへ発展可能であると考える。