1991 年 20 巻 3 号 p. 994-999
St. Jude Medical(SJM)弁による僧帽弁置換術(MVR)90例、大動脈弁置換術(AVR)27例、MVR+AVR(DVR)25例の合計142例にSJM弁167個(僧帽弁位115個、大動脈弁位52個)を置換し、術後溶血に関する検討を行った。DVR群ではMVR群およびAVR群と比較し、LDH値は術後1ヵ月と3ヵ月で、網状赤血球数は術後3ヵ月で有意に高値を示した。SJM弁に起因する臨床的に問題となるような重症な溶血性貧血はみられず、人工弁のサイズの違いによる溶血の程度に差はなかった。DVR症例ではMVRでandanatomical法、AVRで心室中隔にSJMの支軸が直角になるようなperPendicular法の組合せが溶血が少なく、後尖、弁下組織を温存する方法はとくに溶血に問題はなかった。重症な溶血は3例(2.1%)にみられ、いずれもparavalvular leakageに起因していた。