1991 年 20 巻 3 号 p. 1000-1003
St.Jude Medical弁(SJM弁)によるMVR後にperivalvular leakageのたあにSellers分類II度以下のMRが残存した6例について, 術後の溶血とその推移について検討した。6例中4例は術後早期に軽度の溶血性貧血を認めた。しかし, 退院時まで続いた貧血傾向と, LDH値の上昇などの異常所見はその後進行せず, 術後62.2ヶ月を経過した遠隔期ではむしろ改善される傾向にあった。
一方, 遠隔期における非MR例12例との比較においては, 血清Hpと動的赤血球膜物性検査では両者間に差がなかったが, 血清FHbでは残存MR例の方が若干増加していた。
したがって, MVR後にMRが残存しても, 溶血が進行性でなく, またMRによる心機能の低下が問題とならなければ対症療法にて長期間観察することも可能であり, 溶血も徐々に改善されるものと思われた。