人工臓器
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心臓弁置換のシミュレーシヨンにみる機械式血液循環モデルの有用性と限界
梅津 光生
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1993 年 22 巻 2 号 p. 310-315

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抄録
機械式血液循環モデルを心臓弁置換術の臨床の現場においてデータの分析に応用した時の経験をもとに, 新たな機械モデルの開発を試みた. 先ず, 左心房, 左心室, 大動脈を中心とした左心系モデルを構成し, 実際の臨床に用いられている人工弁を直接モデル内に挿入して, その水力学的機能特性が生体内となるべく類似した圧力―流量条件下で求められるように設計した. さらに, 弁の開閉の挙動は弁取付部付近の流路形状の影響を受けると考えられたため, 機能だけでなく形態もなるべく生体と合致するように設計を行った. 40kg程度の生体を対象としてモデル構成要素の寸法決定を行った. モデルは, シリコン製の球形の人工左心房, 砲弾型形状のポリウレタン製人工左心室, シリコン製大動脈弓, 静脈系オーバーフロータンク, コンプライアンスタンク, ニードル弁型末梢抵抗などで構成した。その結果動脈圧のピーキング, スティープニング現象など実際の左心系の血行動態に近い流れの状態を再現できた. また, 心室のみならず, 心房をも積極的に駆動することで, 僧帽弁の挙動をより詳細に模擬できるようになった. さらに, 生体心臓のEmax特性が, モデル上である程度再現できるようになり, とかく混乱しがちな心機能と弁機能を分離できるようになった.
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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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