人工臓器
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22 巻, 2 号
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  • 草川 實
    1993 年22 巻2 号 p. 267
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 後藤 光昭, 小林 明, 由良 洋文, 真栄 田篤, 小林 一清, 赤池 敏宏
    1993 年22 巻2 号 p. 269-273
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ガラクトース残基を側鎖に有するポリスチレン誘導体(poly (p-vinylbenzyl-D-lactonamido), PVLA, (Fig.1))は, 親水性のラクトース残基と疎水性のスチレン骨格を有する両親媒性化合物であるため, 水中で特異な挙動を示し高分子ミセルとして種々の有機化合物を包接することが可能である. また包接に際してPVLAは, 水中で高分子ミセル様の超分子集合体を形成することが蛍光プローブを用いた研究から明らかになった.さらに, PVLAと肝細胞の相互作用のin vitro及びin vivoの解析により肝実質細胞をターゲットとしたミサイルドラッグ用担体としてのPVLAの応用性を検討した結果, いずれの系においても肝細胞によるPVLAの高い選択的な認識と取り込みが示された.
  • 脇一 徳, 小山 義之, 片岡 一則, 横山 昌幸, 岡野 光夫, 桜井 靖久
    1993 年22 巻2 号 p. 274-279
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ボロン酸基を有するポリマーとポリビニルアルコール(PVA)からなる相互侵入高分子網目(IPN)ゲル及びセミIPNゲルを作製し、グルコース濃度に対する応答性およびFITCーインスリンの透過を調べ、インスリン放出デバイスへの応用の可能性について検討した。グルコース濃度に対する膨潤変化、pH変化の影響などを調べた結果、ボロン酸基を有するポリマー鎖とPVA鎖との結合がグルコースの添加によって解離して膨潤することを確認した。グルコース濃度が高くなるほど膨潤度も高くなり、しかもグルコース濃度の段階的変化にもよく相応した膨潤/収縮挙動が確認され、応答性が良好なことが明らかとなった。さらに、透過セルを使ったFITCーインスリンの透過試験の結果から、グルコース存在下での透過量の顕著な上昇が認められ、ボロン酸基を用いた完全合成型インスリン放出デバイスの実現の可能性が示唆された。
  • 由井 伸彦, 岡野 光夫, 桜井 靖久
    1993 年22 巻2 号 p. 280-285
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    炎症応答型インテリジェント薬物送達システムの開発を目的として、薬物リザーバーを有するヒアルロン酸(HA)架橋ゲルを調製し、そのヒドロキシルラジカル(OH・)による分解をin vitroで、炎症に伴う分解をin vivoで検討した。HA架橋ゲルはOH・に特異的に表面から分解し、これによりゲル内に分散させた脂質微粒子(LM)がゲルの分解によって放出された。HA架橋ゲルをラット皮下に埋植したところ、健常時には長期間に亙って安定に存在していたが、外科的侵襲およびカラゲニン肉芽腫炎症に応答して限定分解した。このことから、LMを薬物リザーバーとしてHA架橋ゲル内に導入すると、生体内で炎症の程度に応じた薬物放出制御が可能となった。以上より各種炎症を伴う慢性疾患への局所薬物投与法としての有用性について議論した。
  • 許俊 鋭, 元山 猛, 宮本 直政, 上田 恵介, 長谷川 和康, 朝野 晴彦, 木村 壮介, 横手 祐二, 見目 恭一, 関口 敦, 尾本 ...
    1993 年22 巻2 号 p. 286-291
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    経皮的補助循環法(PCPS)の開発により、外科症例のみならず内科症例にも補助循環治療が開始された。過去12年間に補助循環症例63例を経験した。長期生存率は静・動脈バイパス(VAB)7.5%(3/40)、左心バイパス(AAB)37.5%(3/8)、VAB+AAB補助42.9%(3/7)、補助人工心臓(VAD)補助37.5%(3/8)であった。VABと他の補助循環法で長期生存率に有意差があった(P<0.001)。長期生存率は非手術症例で21.4%(3/14)、手術症例で18.3%(9/49)であった。内科心原性ショック6例にPCPS (VAB:2, AAB:4, VAB+AAB:2)を施行し、1例を救命し2例はショック状態から回復させ手術に移行した。拡張型心筋症に合併した心停止1例はPCPSで心蘇生後心移植へのbridgeとしてVADを用いた。開心術症例でのVAD使用は容易で効果的であったが、内科的心原性ショック症例には簡便に施行できる経皮的AAB法が、VADに替わり得る強力な左心補助循環法と考えられた。
  • M SHIONO, GP NOON, Y NOSE, T HASEGAWA, S SHINDO, Y ORIME, S YAGI, Y SE ...
    1993 年22 巻2 号 p. 292-299
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    As of 1992 pneumatic ventricular assist device (VAD) has been applied for profound heart failure in 16 postcardiotomy patients. Average assist duration was 86 hours and left ventricular assist device in 13 patients and right ventricular assist device in 3 patients. Weaning rate from the device was 66% and survival rate was 20%. Causes of death were multi-organ failure in 40%, ventricular failure in 25%. Infection and thromboembolic complications were not observed during support. Optimization of assist flow has been achieved by monitoring hemodynamic and echocardiographic data. Hemodynamic criteria for weaning from the device has also been established; cardiac index>2.5L/min/m2, pulmonary capillary wedge pressure < 15mmHg, etc. Monitoring of the coagulation system has also been important for avoiding multi-organ failure and getting long-term survival. The results have suggested that this system is versatile for profound heart failure in postcardiotomy setting and could also be applied as a short-term or intermediate-term device for emergent setting and bridge-to-transplant patients. We reviewed our experience using the Nippon Zeon ventricular assist system and introduced clinical experience of ventricular assist device application of Baylor College of Medicine in Houston, U.S.A. and discussed about the problems of assist devices.
  • 中谷 武嗣, 榊 雅之, 穴井 博文, 妙中 義之, 木下 正之, 赤城 治彦, 高野 久輝
    1993 年22 巻2 号 p. 300-305
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    重症心不全に対する循環補助法として、埋め込み型補助人工心臓(VAS)の開発を行うとともにCardiomyoplasty (CMP)の基礎動物実験を行った。埋め込み型VASに対する9頭の成山羊を用いた慢性動物実験による検討では、最長14週間において安定した循環補助を行い得た。CMPについて、成山羊4頭を用いて広背筋のpreconditioning後CMPを施行し、急性期における循環補助効果を正常心にて検討した。広背筋非刺激時と比べ刺激時の収縮期肺動脈圧、右心拍出量、右心室駆出率は、有意差は認めなかったものの上昇および増加傾向を示したが、左心補助効果は認めなかった。埋め込み型VASは心機能の代行が可能であり、長期使用も可能であった。これに対しCMPは、その補助能力に限界があった。重症心不全に対しては、その病態に応じてVASあるいはCMPを適応すべきと考える。
  • 増澤 徹, 木下 正之, 妙中 義之, 中谷 武嗣, 赤城 治彦, 高野 久輝
    1993 年22 巻2 号 p. 306-309
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ニューラルネットワーク(NN)を用いた循環系のモデル化を行い、その基本的有用性の検討を行った。正常成山羊を用いてトレッドミル運動負荷時の生体信号収集を行い、そのデータを基に、血圧等より心拍出量を推定するモデルをNNを用いて構築した。NNの構造は、入力層42個、中間層32個、出力層10個の3層構造とし、入力信号として心拍数、動脈圧、静脈酸素飽和度、身体活動度を、出力信号として心拍出量を選択し、546セットの収集データを用いて600回のバックプロパゲーション法による繰返し学習を行い、心拍出量推定モデルを構築した。構築したNNに学習に用いた一部のデータ(70セット)および非学習データ(66セット)を入力し、計測心拍出量と推定心拍出量の相関を調べたところ、学習データでは相関係数0.965(p<0.001)、非学習データでは相関係数0.869(p<0.001)を得、本方式の基本的有用性を確認した。
  • 梅津 光生
    1993 年22 巻2 号 p. 310-315
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    機械式血液循環モデルを心臓弁置換術の臨床の現場においてデータの分析に応用した時の経験をもとに, 新たな機械モデルの開発を試みた. 先ず, 左心房, 左心室, 大動脈を中心とした左心系モデルを構成し, 実際の臨床に用いられている人工弁を直接モデル内に挿入して, その水力学的機能特性が生体内となるべく類似した圧力―流量条件下で求められるように設計した. さらに, 弁の開閉の挙動は弁取付部付近の流路形状の影響を受けると考えられたため, 機能だけでなく形態もなるべく生体と合致するように設計を行った. 40kg程度の生体を対象としてモデル構成要素の寸法決定を行った. モデルは, シリコン製の球形の人工左心房, 砲弾型形状のポリウレタン製人工左心室, シリコン製大動脈弓, 静脈系オーバーフロータンク, コンプライアンスタンク, ニードル弁型末梢抵抗などで構成した。その結果動脈圧のピーキング, スティープニング現象など実際の左心系の血行動態に近い流れの状態を再現できた. また, 心室のみならず, 心房をも積極的に駆動することで, 僧帽弁の挙動をより詳細に模擬できるようになった. さらに, 生体心臓のEmax特性が, モデル上である程度再現できるようになり, とかく混乱しがちな心機能と弁機能を分離できるようになった.
  • 北村 昌也, 田 鎖治, 秋本 剛秀, 新浪 博, 山崎 健二, 遠藤 真弘, 橋本 明政, 仁田 新一, 小柳 仁
    1993 年22 巻2 号 p. 316-319
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左右心不全, 肺高血圧症モデルにおける人工心臓を用いた単独左心補助の有効性と限界を, 脱血様式と肺血管抵抗の関連から検討した。雑種成犬15頭を用い, 左室脱血(LV群9頭)または左房脱血(LA群6頭)による左心補助を行った。心不全モデルは未処置心を初期対照とし, 段階的な冠動脈結紮による左室梗塞(左心不全), 両心室梗塞(両心不全), 心室細動の誘導による完全両心不全を順次検討した。動脈性肺高血圧症は, 肺フィラリア症により15例中7例に認められ, すべて肺血管抵抗は640dyn・sec・cm-5を越えていた。両心室梗塞の末期や心室細動の場合, 軽度以下の肺高血圧で, 肺血管抵抗が640dyn・sec・cm-5以下のLV群5例において, 収縮期大動脈圧90mmHg以上, 肺動脈流量100ml/kg/分以上, 平均右房圧20mmHg以下の有効な循環動態が維持された。重症の両心不全では, 特に肺血管抵抗が低い場合に, 左室脱血による単独左心補助は有効であった。
  • 峰島 三千男, 星野 敏久, 江良 和雄, 仲里 聰, 久保 和雄, 佐中 孜, 寺岡 慧, 阿岸 鉄三, 太田 和夫
    1993 年22 巻2 号 p. 320-324
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    尿素に関する至適透析の有用性を1-compartment modelを用い検討した。まず, 週3回の維持透析を受けている78例の慢性腎不全患者の週中間透析日前後および週最終透析日前BUN濃度を測定した。これを尿素の体内分布容積V, 生成速度G, ダイアライザのクリアランスKを時間に対し一定とおいたmodelの解析解に代入し, KVV, G/Vならびに週間平均濃度TAC(x)の諸値を算出した。実測BUN濃度の時間平均値としたTAC(y)との間にはy=0.643x+13.1(r=0.898)の高い相関が得られたが, yはxより平均で8.2%低値を示した。これはV, Gの変動に起因するものと思われた。さらに同一ダイアライザ(FB-190U)を用いた23例の患者について総括物質移動係数K。を性能評価式より算出したところ, 0.0247±0.0050cm/minとなった。以上の結果より, 目標とするTAC値を満足させるKt/V→K→QBが患者(固有のG/V)ごとに設定可能となった.
  • 柳 健一, 三好 浩稔, 大島 宣雄
    1993 年22 巻2 号 p. 325-329
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ハイブリッド型肝機能補助装置の性能を評価するためには、培養肝細胞の代謝能の定量的な評価法を確立することが重要である。本研究では、培養肝細胞のアンモニア代謝能が培地中のアンモニア濃度に比例して増大するものと仮定して、肝細胞の代謝能を評価できることを示した。さらに、コンパートメントモデルを用いて物質移動の過程を定式化した。このモデルにより、回転円板型肝機能補助装置による動物実験における物質移動の解析を行ったところ、シミュレーションは、実験結果とよく一致した。多孔質の樹脂を用いる肝細胞の高密度培養法を確立するに当たっても、本モデルによる肝細胞の代謝能の評価法は有用であった。本モデルにより、ハイブリッド型肝機能補助装置の性能を客観的に評価可能であり、装置の改良、スケールアップに有用であると考えられた。
  • ―減負荷モデルを用いた虚血再潅流時の心機能回復―
    島崎 靖久, 張 〓嶂, 金香 充範, 中埜 粛, 松田 暉
    1993 年22 巻2 号 p. 330-332
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    異所性移植心モデルを用いて、虚血による障害心の再潅流後の心機能回復過程を経時的に減負荷状態で観察し、本モデルの心機能評価のための妥当性と有用性を検討した。雑種成犬を用いて、摘出したドナー心の上行大動脈をサポー犬の腹部大動脈に移植する減負荷モデルを作製した。30分間の温阻血を行い、その後18時間の再潅流を行った。心筋酸素消費量、心機能評価として一回仕事量拡張末期圧容積関係(PRSW)、心筋エネルギー効率を求めた。減負荷時での心筋酸素消費量は再潅流後60分で正常に回復した。しかし、PRSW, 心筋エネルギー効率は再潅流後18時間を経ても前値の各々75%, 78%に留まった。本モデルは減負荷状態で不全心の心機能及び心筋エネルギー効率を評価することが出来、各種心室補助装置による心不全治療の効果判定に用いることが出来ると考えられた。
  • 山下 明泰
    1993 年22 巻2 号 p. 333-335
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工臓器研究には種々のモデルが用いられているが、その選択は研究者の背景知識に依存することが多い。著者らは腹膜透析における物質移動の機構を解析する過程で、動物モデルと数学モデルを同等の重要さで用いた。すなわち、まず腹膜透析における物質移動速度が、血液-透析液間の溶質濃度差と腹膜面積との積に比例するという考え方に誤りがあることを、犬を使ったin vivo実験で証明した。一方、この動物実験の結果を基に、血流量の影響を考慮した新しい物質移動モデルを導いた。この数学モデルからは、色々な重要な結果が予想されており、これらは将来の研究の指針を与えることになった。人工臓器は生体臓器の機械"モデル"である。動物モデルと数学モデルとの融合は、100%機械による臓器ばかりでなく、ハイブリッド型人工臓器や、他の生体臓器による機能代行技術を開発する際に、「モデル」ケースとなることが期待される。
  • 宇藤 純一, 原崎 弘章
    1993 年22 巻2 号 p. 336-338
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    近年、免疫系の制御を目的とした体外循環法が注目を集めているが、温熱効果を利用した免疫抑制療法も将来の可能性を秘めた試みのひとつである。本研究では、多核白血球に対するin vitroでの温熱効果をその機能の可逆性をも含めて検討を行った。健常人末梢血より分離精製した多核白血球浮遊液を用いラテックス粒子とインキューベーションすることにより多核白血球の貧食能を評価する系を作成し、(1) 高温環境下での貧食能の変化について、また(2) 非可逆的な機能障害をもたらす温度と処理時間との関係を決定しようと試みた。その結果、(1) 環境温度44℃-30分あるいは46℃-10分の熱処理によりその機能は非可逆的に抑制されることが判明した。以上の結果は温熱療法のみならず、非生理的温熱環境下における生体反応を理解する上でも重要な意味をもつ基礎的データであると思われる。
  • 水野 勇, 谷口 正哲, 由良 二郎, 中村 聡, 青木 秀希
    1993 年22 巻2 号 p. 339-343
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    薬剤carrierとして生体親和性のある水酸アパタイト細粒(HAp細粒)を作製し、さらにこのHAp細粒を基材とした徐放化レンチナン(HAp-LNTN)による癌性腹膜炎の治療に関する実験的検討を行なった。使用したHAp細粒は直径30~50μmの球形の多孔体であり、その表面積は1gあたり約2.5m2である.HAp-LNTN腹腔内投与はfree-レンチナン(free-LNTN)に比べ投与後3時間から24時間で高いレンチナン血中濃度が維持された。またAH130癌性腹膜炎モデルの生存曲線の比較ではHAp単独群, free-LNTN群では抗腫瘍効果は認められなかったが、HAp-LNTN群ではcontrol群に比べ有意に生存率の改善が認められた。HAp細粒は人の歯や骨の無機質の主成分であるため、優れた生体親和性を持ち、徐放化基材として有用であり、HAp-LNTNの腹腔内投与は癌性腹膜炎モデルの生存期間を延長させ、有効性が確認され、今後臨床応用の可能性と効果が期待される。
  • 雨宮 彰, 中埜 粛, 宮本 裕治, 張 〓樟, 松田 暉, 石原 義久, 木村 創
    1993 年22 巻2 号 p. 344-347
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    新しく開発された膜型肺LH-760は、ガス交換膜にシリコーン中空糸を採用した落差灌流、動脈血貯血方式の人工肺であり、従来の多孔質膜使用の人工肺に比ベガス交換性能の経時的低下や血液適合性に関し有利と考えられ、また落差脱血方式なので拍動流、分離体外循環に応用可能である。今回、成人開心術10例に臨床応用し、ガス交換性能、血液適合性について検討を行なった。その結果、ガス交換性能は全例、経時的低下もなく良好であった。また溶血は軽度で、血小板数は体外循環終了時、開始前値の75%を保持した。フィブリノーゲンは体外循環開始後60分まで経時的に減少したが、終了直前には開始前と同等の値に復帰した。FDPは開始直後に上昇したが、その後の経時的増加はなかった。補体系ではC3aが経時的な上昇を示したが、C3、C4、CH50の変動は僅かであった。これらの結果より、LH-760は良好なガス交換性能を有し且つ血液適合性に優れた人工肺と考えられた。
  • 夏目 徹, 奥村 典仁, 清水 慶彦
    1993 年22 巻2 号 p. 348-352
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    外科手術時にしばしば遭遇する実質臓器からの出血や毛細血管、血管吻合部からの出血に際して局所吸収性止血材の使用が有効である。コラーゲンは血小板凝集能を有し、低抗原性であるため局所吸収性止血材の素材として優れている。現在臨床応用されているコラーゲン止血材は粉末状か板状であるため適用範囲が狭い。我々はコラーゲンを綿状に加工することによって、操作性が向上し止血能も格段に向上することを見いだしている。コラーゲンの線維径の違いと止血効果を比較検討したところ、線維径約20-50μmの止血材が最も止血効果が高く操作性も良好であった。これより細い線維径を有する止血材では、止血効果が低下し、溶解度の高いアルカリ可溶化コラーゲンはまったく止血能が無かった。
  • 清谷 哲也, 清水 慶彦, 中村 達雄, 小関 英一
    1993 年22 巻2 号 p. 353-358
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    骨髄出血の止血に用いられている従来のbone waxは非吸収性のため、骨の治癒や再生の障害となったり感染の一因となることもある。われわれは吸収性の骨ろうとしてオリゴ乳酸メチルエステル(LTM)を合成し、その有用性をbone waxと比較検討した。ウサギの腸骨にドリルで1側につき3個の穴(φ 3mm)をあけ、LTM、bone waxで止血し、残りの穴は対象として放置した。1, 2, 4, 8, 12, 16週後に各々2羽ずつ屠殺し組織標本を作成した(各N=4)。またLTM、bone waxを腰部の筋層内に埋入して、1週後に組織標本を作成した(N=2)。両者の止血能に差を認めなかった。bone waxはその周囲に強い異物反応を示したのに比べ、LTMではほとんど異物反応を認めず組織に対する侵襲が少なかった。しかしLTMは16週後も大部分残存していた。吸収速度のより速いLTMを合成することにより、骨ろうとしての有用性が増すと考えられた。
  • 島田 ひろき, 平井 圭一
    1993 年22 巻2 号 p. 359-363
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ラミニンーファイブロネクチン二重コーティング処理コラーゲン糸をポリエステル製ブレードチューブに入れた神経再生補助グラフトをWistarラット成体の坐骨神経欠損部(1cm)に埋植した。移植30日後、神経線維がコラーゲン糸に沿ってその間隙を成長伸展していた。60日目には数多くの再生神経束が観察された。また、グラフト前後で上行性、下行性の活動電位が導出され、運動、知覚両神経の再生が示唆された。一方、未処理グラフトでは、30日目、線維芽細胞の浸潤が激しく再生神経数は極少数であった。60日目に活動電位が導出されたが、再生神経数は明らかに少なかった。何れのグラフトにおいてもコラーゲン糸は60日目に吸収消失していた。以ヒの結果、ラミニンーファイブロネクチン二重コーティング処理コラーゲン糸は線維芽細胞の浸潤を抑制し、神経再生をより効果的に促進すると思われた。
  • 李 暁光, 中村 達雄, 清水 慶彦, 富畑 賢司, 筏 義人, 遠藤 克昭
    1993 年22 巻2 号 p. 364-369
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は、長さ10mmのラットの坐骨神経の欠損を熱脱水架橋処理ゼラチンチューブ及びグルタールデヒド処理ゼラチンチューブを用いて連結し、坐骨神経の再生回復の状態を観察した。熱架橋処理ゼラチンチューブ群では1ヶ月後にはチューブの壁内に血管網が形成され、2ヶ月後にはチューブは分解吸収されており、坐骨神経が再生していた。手術後2ヶ月及び4ヶ月において行ったOsmium染色、Bodian染色及びS-100蛋白染色による形態的観察では、2ヶ月から再生軸索が数多く認められ遠位端に達しており、髄鞘も再生していた。WGA-HRP染色では、脊髄前角の運動神経細胞と後角の知覚神経終末が染色された。機能的にも電気刺激による誘発筋電図、大脳体性感覚誘発電位が回復していた。一方、グルタルアルデハイド処理ゼラチンチューブ群では神経の再生は認められなかった。これらの結果から、熱脱水架橋ゼラチンチューブは神経再生チャンネルとして優れた医用材料になり得ると結論された。
  • 古薗 勉, 岸田 晶夫, 明石 満, 丸山 征郎, 宮崎 剛, 鯉沼 康美, 松本 竹男
    1993 年22 巻2 号 p. 370-375
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    アラミド・シリコーン樹脂(PAS)は芳香族ポリアミド(アラミド)とポリジメチルシロキサン(シリコーン)を用いて合成されたマルチプロック共重合体であり、シリコーンの種々の特性とアラミドの強靭性とをあわせもつ新しいエラストマーである。本研究では低温重縮合法によりPASを合成し、表面分析、気体透過性及び血液適合性試験を行い、PASの医用材料としての基本性能について検討した。その結果、PAS表面はシリコーン成分で覆われており、このためPASは良好な血液適合性を有していた。酸素透過性はシリコーン含有率53%以上でシリコーンに匹敵する高い値を示し、人工肺用膜に応用可能であると考えられた。また湿式紡糸法にて中空糸が作製できた。PASは成形性に優れ、これらの種々の特筆すべき性質より、新しい医用材料としての応用が期待できる。
  • 三輪 裕通, 松田 武久, MJ MOGHADDAM
    1993 年22 巻2 号 p. 376-379
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は、手術後の癒着防止を目的として、光架橋性ムコ多糖を用いた癒着防止技術を開発中である。ムコ多糖に光二量化性基を導入し、紫外光照射によりムコ多糖を架橋・ゲル化する技術である。得られた光架橋ムコ多糖フィルムは、光二量化性基の導入率が低いものは、高い水膨潤度を示し、導入率が増加するにつれて水膨潤度の低下を示した。In vitroでの細胞接着性は、水膨潤度の低下にともない非接着性から接着性へと変化した。ラットを用いたIn vivo実験において、光架橋ムコ多糖フィルムは組織非接着性と生分解性を示し、癒着防止材として有用であると考えられた。また、光架橋性ムコ多糖緩衝溶液をIn situで紫外光照謝しゲル化する技術は、内視鏡下手術等への広範囲の応用が可能であると考えられた。
  • 阿部 一彦, 鈴木 憲, 岡野 光夫, 桜井 靖久, 菅原 基晃, 堀江 俊伸
    1993 年22 巻2 号 p. 380-385
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ラメラ状のミクロドメイン構造を有するHEMA-Stブロック共重合体表面の血小板活性化抑制機構をより明確にするために、PSt表面、HEMA-Stランダム共重合体表面を対照群として、マイクロスフィアカラム法を基本構成とした37℃実験装置下における血小板の材料応答について、走査電顕(SEM)及び透過電顕(TEM)を用いて解析した。特にブロック共重合体表面に対する接触血小板及び未刺激血小板のTEM所見は高解像度画像処理解析装置(IA)により定量評価した。その結果、ブロック共重合体表面はPSt表面、ランダム共重合体表面に比べて血小板の形態変化を著しく抑制することが明らかになった。また、IAによって算出した未刺激血小板とブロック共重合体表面の接触血小板の貯蔵顆粒数には有意差はなかった。以上のことより、ブロック共重合体表面は能動的に血小板の活性化を抑制することが示唆された。
  • 三隅 寛恭, 今井 康晴, 石原 和明, 星野 修一, 澤渡 和男, 寺田 正次, 竹内 敬昌, 杉山 喜崇, 大野 英昭
    1993 年22 巻2 号 p. 386-389
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Hancock Composite Graftの心外導管を用いて手術を行った45症例の遠隔成績を検討した。6例で術後2ヵ月から10年2ヵ月に遠隔死亡がみられ、死因は突然死2例、房室錯位群の心不全2例、その他2例であった。15例に対し術後4年4ヵ月から15年8ヵ月で再手術を行った。再手術の原因は全例導管の狭窄によるものであった。感染性心内膜炎の合併は2例にみられ、いずれも内科的治療のみで改善した。Kaplan-Meier法による実測生存率は10年で88%、16年で84%と満足すべき結果であったが、10年以降に再手術の必要な症例が多くReoperation Free Rateは術後10年で84%、15年で、28%であった。長期生存例は全例、NYHA分類上I度からII度であった。これらの結果より遠隔期の心外導管の狭窄に対する外来での慎重な経過観察が必要で、導管素材の改良開発が望まれる。
  • ―金属材料の安全性を中心にして―
    中村 達雄, 早川 克巳, 清水 慶彦, 藤原 一央, 奥村 典仁, 有安 哲哉, 滝本 行延, 清谷 哲也, 寺町 政美
    1993 年22 巻2 号 p. 390-393
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    コイル状をはじめ種々の形状の金属製人工材料が磁気共鳴イメージング(MRI)に用いられる強磁場や、さらに加わるRFパルスの下でどのような挙動をするのか調べるため、実際臨床で使われているメディカルグレイドのステンレス、チタン、チタン合金、チタンニッケル合金で作ったコイルや, 粉末状の鉄、鉄酸化物さらに径の大きい鉄コイルなどを用いてMRI撮像時の温度上昇、起電力、起電流について測定し検討を行った。
    MRI装置は超伝導0.5TのMRT-50A(東芝製)を用い、のスピンエコーT2強調画像とT1強調画像とフィールドエコーの通常臨床で用いられる条件のスキャンを行った。
    MRI撮像時に鉄以外はコイルの移動はなかった。発熱に関しては乾燥状態、生理食塩水中、卵白中でスキャンをおこなったがコイル、粉末ともに火傷を発生させるような発熱を起こさなかった。RFパルスによる誘導起電力だけでは金属自体の熱傷を誘発するような発熱はなく、報告されているMRI検査中の熱傷事故の原因に関してはさらなる検討が必要である。
  • 中山 泰秀, 松田 武久
    1993 年22 巻2 号 p. 394-397
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工心臓・人工血管等のデバイス表面に、高度の生体適合性の付与が可能であるハイドロゲルの固定化を目的として、光化学反応を用いた新しい表面修飾法の開発を行った。用いた化学反応は、1) 光照射によって分子間で2量化反応を生成するケイ皮酸基の光反応性、2) 光照射によって近傍の炭素と共有結合を形成するフェニルアジド基の光反応性の2種類である。基材上にアジド基を導入した高分子を塗布し、続いてケイ皮酸基を導入した水溶性高分子を塗布した後、光照射すると、水溶性高分子層はゲル化し、同時に、フェニルアジド基の光反応性によって基材表面に化学固定化された。水溶性高分子層内にヘパリンを混合すると光照射によりゲル内に担持された。水膨潤度の高いゲルを固定化すると、in vitroにおいて血小板粘着が抑制され、全血凝固時間が延長した。ヘパリン徐放により血液凝固が阻害された。
  • ―内膜治癒の検討―
    梶原 博一, 野一色 泰晴, 平野 克典, 市川 由紀夫, 石井 正徳, 小菅 宇之, 孟 真, 山本 賢二, 近藤 治郎, 松本 昭彦
    1993 年22 巻2 号 p. 398-402
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    皮下脂肪結合組織細片を用いて人工血管の網目をシールする方法を開発し、出血に対しての安全なパッチ材料を作製した。今回、このパッチ材料の内膜治癒を検討した。方法としては、皮下脂肪結合組織を細片として高有孔性ダクロン製人工血管内に圧注入し、組織片により目詰まりさせ、これと対照のpreclotting法と隣合わせのパッチを作製した。これを成犬右室流出路にパッチ縫着し、2週間後、摘出し、肉眼的、光顕的に観察した。結果は、組織片部は全体が新生内膜で覆われ、光顕的にも内皮様細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞で構i成されていた。preclotting部位は、血栓で覆われ、光顕的にも内腔側はフィブリン網と血球のみであった。われわれの作製したパッチ材料は従来のpreclotting法に比較して、明らかに内膜形成が速く、かつ良好で高い治癒性を有していた。この結果は臨床においても同様の差異が認められると考えられ、より理想的なパッチ材料として期待できる。
  • 高塚 旨寛, 松田 武久
    1993 年22 巻2 号 p. 403-406
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    本研究は成型加工したデバイスの任意の部位に細胞接着性あるいは非接着性を付与できる材料の合成と表面加工技術を開発することを目的とした。合成した高分子はフェニルアジド基とサクシニイミド基を側鎖に有するビニル共重合体である。前者の官能基は紫外光照射により基材と共有結合し、後者の官能基は活性水素化合物と共有結合する性質を有する。上記のポリマーはコーティングし、光照射することにより基材表面に化学固定化された。細胞接着ペプチド(GRGDS)及びフィプロネクチンは共重合体側鎖の活性エステル基と反応して化学固定され、これらの造膜面では細胞接着性表面が形成できた。一方、親水性基やアルブミンを化学固定すると、細胞非接着性表面が形成できた。またフォトマスクを用いると表面微細加工ができた。
  • 菅原 隆, 松田 武久
    1993 年22 巻2 号 p. 407-411
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工材料表面の個々の細胞の遊走方向制御・配列制御を目的とし、光化学反応を用いて表面微細修飾した表面で細胞の遊走過程・配列を定量的に評価した。表面微細修飾は、光反応性であり且つ親水性である共重合体poly(m-azidostyrene-co-N, N-dimethylacrylamide)を培養用シャーレにキャストし、スリット幅20~130μmのフォトマスクを被せ、紫外光照射後、未露光部の共重合体を洗浄することにより行なった。この表面に内皮細胞を播種すると、細胞は未露光部の培養用シャーレが露出した表面のみで接着・遊走した。遊走過程を画像解析システム(PIAS LA-500)により解析すると、細胞が遊走できる幅はスリット幅に完全に一致し、平均移動速度は未処理の表面と同程度であった。また、単層充填の状態では、細胞は細長い紡錘形をし、大半がスリットの長辺と平行に配向していた。これらのことから、開発した表面微細加工技術により遊走方向が制御できること、細胞の配向制御及び二次元パターン組織化が可能であることが示された。
  • 高塚 旨寛, 松田 武久
    1993 年22 巻2 号 p. 412-416
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    RGD(Arg-Gly-Asp)配列を含むペプチド(GRGDS)とアルブミンとの結合体(GRGDS-ALB)を合成し、フィプロネクチン(FN), ビトロネクチン(VN)と同等の細胞接着活性を有することを既に報告した。本報告では、接着性蛋白質の接着リガンド/細胞レセプター相互作用を内皮細胞の接着阻害実験により検討した。内皮細胞を分散させた培養液に阻害剤としてGRGDSペプチドを添加すると、内皮細胞の接着阻害がおこった。接着を50%阻害するペプチド濃度はGRGDS-ALB, VN, FNの順に高くなり、GRGDS-ALBの接着リガンドと細胞レセプターとの結合性が低いことが示された。FNの接着活性部位(GRGDS)とVNの接着活性部位(TRGDVF)の接着レセプターとの結合性を比較すると、TRGDVF-アルブミン結合体はGRGDS-ALBより低いことが示された。合成した人工接着性蛋白質のリガンド/レセプター相互作用の強さは天然の接着性蛋白質より低いものであった。
  • 土田 博光, SE WIKSON, R KOWLIGI, 長江 恒幸, 石丸 新, 古川 欽一
    1993 年22 巻2 号 p. 417-420
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Expanded polytetrafluoroethylene(PTFE)グラフトを長軸方向に圧縮し, elastomer(polyurethaneを使用)で被覆することにより伸張性をあたえる。という操作を両端2cmにおこなったグラフト(elastomer PTFE:長さ7-8cm, 直径6mm)を12匹の雑種雌成犬のaortoiliac間に移植, 対側に従来のPTFEグラフト(standard)を移植し, 操作性, 治癒を観察した。ElastomerPTFEは優れた伸張性, 形態保持性をしめし, 縫合糸による裂けがなく, 針穴出血がみられないなど優れた操作性能を認めた。移植後120日までにグラフトを摘出したところstandard(8/10), elastomer(9/10)とも良好な開存率をしめし, 吻合部内膜肥厚, パンヌス侵入の長さも両者間に有意差はなかった。しかしelastomer PTFEではelastomer被覆部に全く組織侵入を欠くため同部と周囲組織のあいだに間隙を形成していた。これは各種合併症の誘因となる懸念があり, 同グラフトの臨床使用にはさらに検討を必要とする。
  • ―fibril lengthを中心に―
    平林 国彦, 斉藤 大, 三井 利夫, 児玉 亮, 堀原 一
    1993 年22 巻2 号 p. 421-425
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ePTFE人工血管を用いてその線維長を変化させ、新生内皮化ばかりでなく人工血管全体の器質化および宿主からの反応にどのような差が生じるかを検討した。20μm, 40μm, 60μm, 90μmの各fibdl lengthの人工血管を用いラットの腹部大動脈を置換、5週後に摘出しその違いを検討した。20μm, 40μmのグラフトは血流側の新生内皮化はほとんど認められなかった。それに対し60μm, 90μmグラフトでは100%内皮細胞によって被覆されていた。人工血管内部の器質化は、主に紡垂状細胞によってなされており、collagen type I, type IIIの分布、および含有されるアミノ酸においても各線維長間に有意な差を認めなかった。線維長の長い人工血管外側には、異物巨細胞を認め、宿主による異物反応はより強いことが推測された。
  • ―リング付き薄壁型ゴアテックスと自家大伏在静脈グラフトの比較―
    大庭 聡, 小須賀 健一, 浦口 憲一郎, 山名 一有, 剣持 邦彦, 久保田 義健, 桃崎 雅弘, 大石 喜六
    1993 年22 巻2 号 p. 426-429
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1986年より1991年までにASO症例に対して, Reinforced expanded PTFE(以下REP)と自家大伏在静脈(以下ASV)を用いて, 末梢側吻合部位を膝上部(以下AK)においた大腿・膝窩動脈バイパス術(以下FPB)施行した36例44肢を対象とした。平均年齢を除いて両群の背景因子に差を認めなかった。術後療法としてワーファリンを80.0%, 33.3%抗血小板剤を100%, 90.5%それぞれ投与した。REP群15例16肢の累積開存率は, 1年:100%, 2年:80.0%, 4年:80.0%であった。遠隔期閉塞は2例あり, その原因は, 吻合部内膜肥厚1例, 末梢側病変の進行1例と推測された。これに対してASV群21例28肢の累積開存率は, 1年:100%. 2年:96.3%, 4年87.5%, 5年:82.4%であった。ASOに対するFPBの材料として,REPはASVと比較し開存率に差は無く,有用性が示唆された。
  • 井手 博文, 鎮西 恒雄, 藤正 巌, 井野 隆史, 安達 秀雄, 水原 章浩, 山口 敦司, 川人 宏次
    1993 年22 巻2 号 p. 430-433
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    胸部大動脈瘤に対する人工血管移植術に対する手術手技, 補助手段の簡素化に向けて, 人工血管同士の簡易脱着システム開発を目的として, 人工血管接着リングの開発を行なった。同リングは, チタン製で2箇所の外溝を有するthin wall tubeおよび同部位にてtubeに人工血管を固定すネジ締め付け機構を有する外リングから構成される。
    実験―抗張力試験―最大15kgまでの抗張力性能を確認。耐圧試験一400mmHgまでの耐圧性能を確認。模擬回路による約260万回の拍動流負荷試験にても, 同人工血管接続部の肉眼的破綻や, 人工血管走査電顕標本にても, 人工血管の損傷は認められなかった。以上より, 本リングの構造上の物理学的耐久性を有することが示された。
  • 鈴木 伸之, 奥村 豊, 片見 一衛, 熊田 敏彦
    1993 年22 巻2 号 p. 434-439
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工血管への石灰沈着機序を検討する目的で、市販あるいは試作品のexpanded polytetrafluoroethylene(EPTFE)およびダクロン人工血管をイヌ頸動脈に置換し、その摘出開存標本を免疫組織化学的方法を中心に用いて解析した。石灰沈着は共通して、人工血管壁内および器質化仮性内膜の硝子化組織に置換後3ケ月目より生じ、その硝子化組織はコラーゲン1型の濃厚沈着により形成されていた。この硝子化組織中のコラーゲン1型は、周囲結合織から人工血管壁内へ侵入した線維芽細胞に由来していると考えられた。次に、EPTFE人工血管においては、その繊維長が長いと壁内組織の硝子化・石灰沈着が減少する傾向が認められ、特に90μmの繊維長では硝子化・石灰沈着はほとんど生じなかった。
    以上の結果、石灰沈着は人工血管に対する宿主側の組織反応の一つとして生じた過剰なコラーゲンI型蓄積巣を足場にして生じることを示唆した。
  • 山本 賢二, 野一色 泰晴, 小菅 宇之, 石井 正徳, 市川由 紀夫, 孟 真, 梶原 博一, 井元 清隆, 近藤 治郎, 松本 昭彦, ...
    1993 年22 巻2 号 p. 440-444
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々はporosity約1000mlの超極細ポリエステル繊維製人工血管(東レ製)を精製コラーゲン(高研製)で被覆し,デナコール(ナガセ化成)で架橋処理したコラーゲン被覆人工血管(CUFPG)を試作した. その特性をゼルシール®と通水性, 被覆物質量, 被覆物質剥離テスト, パイロジェンテスト, および培養細胞との親和性について比較検討した. 結果はCUFPG, ゼルシール®ともに通水性は認めなかった. しかしゼルシール®は単位面積あたりの被覆物質量がGUFPGの約7倍であり, ゼラチンは剥離しやすく, またエンドトキシンが37℃72時間の抽出条件で11.33pg/cm2検出された. これに対しCUFPGは被覆物質は剥離せず, エンドトキシンは検出されなかった. 培養細胞の親和性は各グラフトとも良好であった. 以上よリゼルシール®は被覆物質の精製度, 量, 架橋方法等に問題があるように思われ, これに対しCUFPGは精製されたコラーゲンが効率よく被覆され架橋されており, 安全な入工血管と考えられた.
  • 佐藤 伸一, 丹生 智史, 神田 圭一, 平井 二郎, 高橋 章之, 中嶋 俊介, 島田 順一, 岡 隆宏, 野一色 泰晴
    1993 年22 巻2 号 p. 445-448
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    血行再建術では人工血管のporosityが大きいほど器質化に有利で、また吻合の操作が容易となるためニット製の人工血管を利用する傾向にある。しかし、ニット製の人工血管の長期間使用例でダクロン繊維の劣化に伴う人工血管の瘤化の報告が近年散見されるようになってきた。またニットの人工血管は長期になると口径が大きくなり人工血管長の短縮をきたすなどの不利な点がある。そこで超極細ポリエステル繊維(UFPF)を含む平織りの人工血管(トレグラフト®)は一般のダクロン平織り人工血管より器質化が良好でありニットの欠点を克服したものでありこれを臨床使用した。胸部および腹部の大動脈瘤、および末梢動脈の再建術等に用いた。その結果、吻合に際して針の刺入し易さや宿主血管との適合性はきわめて良好であった。さらにE-PTFEに比してバルーンパンピングチューブの挿入用人工血管としても優れていた。
  • 片見 一衛, 濱口 美穂, 笈沼 宏, 熊田 敏彦
    1993 年22 巻2 号 p. 449-454
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    繊維長15, 30, 60および90μmのexpanded polytetrafluoroethylene(EPTFE)の内腔面における、初期での血栓膜形成状態ならびに遠隔期での新生内膜の器質化をウサギ頸動脈への置換により検索した。15μmは7日後でも繊維間隙への血液成分の滲み込みに乏しく繊維間には空隙が残存し、血栓膜形成は不完全・不安定であった。一方、30鋼以上では繊維間隙への血液流入が速やかに起こり、壁内血栓ならびにこれに連続する血栓膜が早期に形成された。15μmでは1年を経過しても内膜の器質化は不完全であったが、30即以上では3ケ月後には内膜はほほ器質化され、内皮化域も増大した。内膜厚は繊維長が長いほど増加する傾向を示したが、1年後の開存率は他の繊維長に比べ90μmで高かった。以上の成績から、長繊維長EPTFEは血栓膜の早期形成に、さらに、その後の器質化内膜の安定化においても優位であることが示唆された。
  • 安藤 太三, 安達 盛次, 中谷 充, 川島 康生
    1993 年22 巻2 号 p. 455-458
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    セラチン処理人工血管(ゼルシール)を胸部大動脈瘤手術92例に使用した。瘤の病型は解離29例(A型19, B型10)、非解離63例(AAE・上行14、弓部24、下行15、胸腹部10)で、補助手段として人工心肺を用いた体外循環法60例、遠心ポンプ法32例にて、上行置換14、弓部全置換32、弓部部分置換12、下行置換23、胸腹部置換11を施行した。術後合併症として呼吸不全13、LOS7、ARF6、出血再開胸5、心タンポナーデ5を認め、病院死亡は8例(8.7%)であったが、人工血管と直接関係はなかった。本人工血管はニッテイドダクロンでゼロポロシティのため、縫合が容易であり、人工心肺を用いた症例でも術中出血はほとんどなく、術後の血液漏出も認めず、大動脈手術に有用であった。しかし、術後1~2週間目にゼラチンに対する生体反応と思われる発熱が経過良好例に53%認められ、注意深い観察が必要であった。
  • 進藤 俊哉, 多田 祐輔, 佐藤 紀, 大島 哲, 古谷 隆俊, 出月 康夫
    1993 年22 巻2 号 p. 459-461
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    内皮細胞を播種した人工血管の部位による組織学的変化を経時的に観察し、グラフト閉塞の原因を推測させる結果を得た。イヌの静脈より採取した内皮細胞をポリエステル人工血管にseedingし、同じイヌの頚動脈に移植した。2週間後、3ヵ月後に回収し、グラフト中央部、吻合部を組織学的に検討した。グラフト中央部では、2週間で既に内皮細胞の一層構造が観察されたが繊維の起伏に応じた凹凸がみられた。3ヵ月後には、多層の内皮下組織が形成されより滑らかになった。一方、吻合部では2週間目で内皮細胞の部分的な被覆が見られ、3ヵ月で連続した一層構造を形成したが、内皮下組織の厚みは著明に増加していた。以上の結果より、内皮細胞seedingによってグラフト中央部では安定した新生内膜が形成され得るが、吻合部では内皮下組織の肥厚が時間と共に増大し、やがて吻合部内膜肥厚からグラフト閉塞へと陥ると推測された。
  • 設計概念と短期成績
    丹生 智史, 車谷 元, 佐藤 伸一, 神田 圭一, 岡 隆宏, 渡辺 幸二, 國友 哲之輔
    1993 年22 巻2 号 p. 462-467
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生分解性材料からなる抗血栓性表面を有し, 最終的には自己の新生内膜で置換されることを目指した小口径人工血管(内径3mm)のプロトタイプを考案した. 人工血管の支持体には超極細ポリエステル繊維を用い, これをゼラチン・ヘパリン複合体からなる「人工内膜」と熱変性アルブミンからなる「人工マトリックス」の二層に被覆した. このタンパク質ハイブリッド化人工血管を雑種成犬3頭の両側頸動脈に計6本置換移植した. 4週間後, 6本中5本(83%)が開存していた. 組織学的には, 吻合部新生内膜は人工内膜層を徐々に吸収しながら良好に接着伸張していた. 中央部に残存する人工内膜上には血栓形成はなく, 4週間後も抗血栓性を維持していることが示唆された. 人工マトリックスもほぼ吸収され人工血管壁の器質化が進んでいた. 4週間の置換移植実験では, 当初の設計に見合った機能が発揮されていることが示された.
  • 三輪 裕通, 松田 武久, 神田 圭一
    1993 年22 巻2 号 p. 468-472
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体血管壁に近い階層構造を有するハイブリッド人工血管は、急性期より安定した構造と抗血栓性を発揮できると考えられる。内虜細胞層・平滑筋細胞層よりなる階層型ハイブリッド人工血管(MODEL II)、及び内虜細胞層のみを有するハイブリッド人工血管(MODEL I)を、コラーゲンとデルマタン硫酸の複合ゲルを人工細胞外マトリックスとして用い、ダクロン製人工血管(内径4mm、長さ6cm)内腔にIn vitroで構築した。犬9頭への移植実験(2~12週間)では、グラフトは全て開存した。2週間移植MODELIにおいては内皮下に平滑筋細胞層は認められなかった。2週間移植MODELHにおいては重層平滑筋細胞と、自己産生によると考えられる緻密な細胞外マトリックスより成る、平滑性を有する均一な中膜層が認められた。2週間移撤ODELIの内皮化率は約90%であったのに対し、2週間移植MODEL IIでは100%であった。In vitroで組み込まれた平滑筋細胞は、急性期において安定した中膜層を形成し、内虜細胞の安定化に寄与したと考えられる。
  • 三輪 裕通, 松田 武久, 谷 叙孝
    1993 年22 巻2 号 p. 473-477
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は、力学的適台性と抗血栓性を兼備したハイブリッド型人工血管を開発中である。このグラフトは、ポリウレタン製人工血管(内径3mm、長さ5cm)、コラーゲンとデルマタン硫酸の複合ゲルよりなる人工基底膜、及びIn vitroで構築された内虜細胞層より成り立つ。このグラフトを雑種成犬9頭の両側総頸動脈に2~26週間移植した。移植グラフトは90%以上の内皮化率を示した。高い内皮化率は、人工基底膜の持つ、内皮細胞接着・増殖促進効果、血小板粘着抑制効果、及び人工血管へのアンカー効果によりもたらされたものと考えられる。また、劇生期における吻合部内膜肥厚も軽微であり、ポリウレタン製人工血管の力学的適合性と内皮細胞が協同的に作用した結果であると考えられる。
  • 神田 圭一, 松田 武久, 岡 隆宏
    1993 年22 巻2 号 p. 478-482
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    人工血管に血管壁細胞による階層構造を形成させ, さらに組み込まれた細胞の配向を制御することができればより機能的なグラフトを作成することができると考えられる. この作業仮説に基づき, 生体組織に類似した細胞配向を人工血管に組み込む為の基礎的研究として, In vitroにおける配向細胞層の構築を試みた. I型コラーゲンゲル中に仔牛大動脈由来の平滑筋細胞(SMC)を埋植して作成した”人工中膜モデル”の中央にシリコンチューブを埋め込み, これを加圧拍動させて血管拍動を模倣した力学的ストレスを負荷した. ストレスを負荷しなかったゲル中では多角形のSMCとコラーゲン線維網が無秩序に配列したが, ストレス負荷を行ったゲル中では紡錘型のSMCとコラーゲン線維束がシリコンチューブの周囲に同心円状に配向し, 経時的に増強する傾向を示した. 本研究で作成した”人工中膜モデル”では筋性動脈中膜に類似した構造を再現することができた.
  • ―血管壁細胞の配向特性―
    神田 圭一, 松田 武久, 岡 隆宏
    1993 年22 巻2 号 p. 483-487
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体内に存在する細胞は機能発現のために効率の良い配向をなすとされている. 血管壁細胞は常時拍動流による伸縮性ストレスに曝されているためこの力学的ストレスが細胞配向に影響していると考えられる. 本研究では仔牛大動脈より採取した血管平滑筋細胞(SMC)内皮細胞(EC)線維芽細胞(FC)の3種の血管壁細胞を伸縮膜上に平面培養し, 種々の条件で周期的伸縮性ストレス負荷を行い, 細胞の配向反応及び形態変化について定量的に評価した. ストレスを負荷しなかった細胞は不規則に配列したがストレス負荷を行った細胞は経時的にストレス方向に垂直に配向し, その程度はストレスの振幅・振動数が大きいほと顕著であり, ECに比較してSMC・FCで著明であった. 形態変化を示す指標にはストレス負荷の有無に関わらず, 著明な変化は認められなかった. 伸縮性力学的ストレスの負荷は生体外で細胞配向を制御する基本技術となり得ると考えられた.
  • 有安 哲哉, 田村 康一, 清水 慶彦, 中村 達雄, 筏 義人, 阪井 和彦
    1993 年22 巻2 号 p. 488-494
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    4種類のポリウレタン人工血管を用いて雑種成犬の頸動脈置換の実験を行った。エステル型1種類とエーテル型3種類を用いたが, エステル型(A群)のみ開存例を得, 開存率は85.7%であった。エーテル型は破裂した群(B群)1種類と閉塞した群(C, D群)2種類であった。A群とB群は構造もコンプライアンスも同じであったが, C群D群は, A群より硬かった。このことより小口径人工血管には至適コンプライアンスがあり, 良好な開存を得るためには重要であることが示唆された。
  • 大越 隆文, G SOLDANI, M GODDARD, PM GGLLETTI
    1993 年22 巻2 号 p. 495-499
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    2種類の多孔質のポリウレタン性人工血管(内径1.5mm), すなわち漏水率2.7ml/min/cm2の人工血管(PUG-2.7)と漏水率39ml/min/cm2の人工血管(PUG-39)を作製した(spray, phase-inversion technique)。それらをラットの腹部大動脈に端々吻合で植え込んだ(長さ1.5-2.0cm, PUG-2,7:n=23, PUG-39:n=17)。さらに, PUG-39では長さ10cmのループ状グラフトとして同モデルに植え込んだ(n;1)。PUG-2.7では2週間後の開存率が73%(8/11)であった。しかし, 3ケ月後では開存率は8%(1/12)に低下し, 開存していた1例において新生内膜肥厚があり, グラフト中央部には内皮細胞を認めなかった。材料壁内部への宿主細胞侵入は少なかった。PUG-39では3ケ月後の開存率が76%(13/17)であった。1例を除く全開存例で内腔面全体に及ぶ内皮細胞被覆を伴った均一な新生内膜形成が見られた。材料壁内部は基質化していた。ループ状グラフトも開存しており, 内皮細胞化を伴う, 新生内膜が両吻合部から連続的に, また中央部では多数の島状となって認められた。以上より, 漏水率のより高いポリウレタン性小口径人工血管が優れた開存性と高治癒性を示すことが判明した。
  • 三澤 吉雄, 長谷川 嗣夫, 蘇原 泰則, 上沢 修, 長谷川 伸之, 荒井 太紀雄
    1993 年22 巻2 号 p. 500-502
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体の動脈に類似したコンプライアンスを有するポリウレタン製人工血管(6mmφ〉を用いた血行再建術の経験を報告する。10~13kgの雑種成犬10頭を用い、ヘパリン(Heparin Sodium)2mg/kgを全身投与後、同人工血管(2cm長)を用いて、腹部大動脈の血行再建を行った。術後はヘパリンの中和や、抗血小板薬などの投与を行わず、3~10週後に移植時同様ヘパリン投与下で、人工血管を採取した。採取時にグラフトは全例開存性し、周囲に感染や異常肉芽形成はみられなかった。また採取直前の血管内超音波検査では、人工血管や吻合部は正円形に保持されていた。組織学的には、人工血管内にも一層の内皮細胞の新生が著明で、吻合部付近では、新生内皮細胞下に結合組織の増殖がみられ、走査電顕像では、紡錘形の新生内皮細胞が確認された。以上より、ポリウレタン製人工血管(6mmφ)は開存性、組織反応性の点から、優れた代用血管になり得ると考えられた。
  • 市川 由紀夫, 野一色 泰晴, 梶原 博一, 井元 清隆, 石井 正徳, 小菅 宇之, 山本 賢二, 近藤 治郎, 松本 昭彦
    1993 年22 巻2 号 p. 503-506
    発行日: 1993/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    仔牛頸静脈を親水性架橋剤であるエポキシ化合物で化学処理することにより、それに内在する静脈弁をそのまま利用して、生体弁付きRV-PA conduitを作成した。動物実験として、作成したconduitを6頭の雑種成犬の右室一肺動脈間に移植し主肺動脈を結紮した。術後4時間および20日目に肺動脈一右室引き抜き圧測定、右室造影を行った結果、conduitのvalveは低圧下でも正常に作動していた。右室一肺動脈圧較差は4時間で0mmHg, 20日目で3mmHgであった。摘出標本では弁葉と布製人工血管吻合部に少量の血栓付着を認めたが巨大な血栓は認めなかった。生体弁付き仔牛頸静脈は静脈組織特有の軟らかさ、しなやかさといった特性をもち、また、生体弁および弁前後の特殊構造という血行動態的に理想的な形態をもっている。エポキシ処理により、この特性を温存させたRV-PA valved conduitは以上の結果で明らかなように現在臨床で使用されているものにない特性を持っていると思われる。
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