1993 年 22 巻 2 号 p. 545-549
極細繊維を用い、ローポロシティで取扱性と生体適合性の良い新規人工血管(トレグラフト)の開発を行い、予期通りの性能を有するものである事を確認した。本人工血管の基本技術思想は、超極細繊維によるミクロポーラス構造、繊維の絡合およびダブルベロア構造によって取扱性と生体適合性を両立させることを狙ったものである。製法上のポイントは、超極細繊維(UPF)と通常繊維(OPF)とを組み合わせたチューブの形成、UPFの起毛と絡合、および入念な残留異物除去にある。本人工血管は従来のローポロシティ人工血管に比し、柔軟性、耐ほつれ性に優れ、また残留異物がなく素材的にも純粋である。耐漏血性はポロシティ100にもかかわらず従来の50品並の性能を有している。動物実験により速やかな仮性内膜形成と細胞侵入が認められ、生体適合性が良好なことも確認された。臨床への適用においても現在のところ問題となるような点は全く報告されていない。