抄録
機械式人工心臓弁の運動機構を解明すべく、精密な流量制御が可能なコンピュータ制御水圧駆動式循環系シミュレータを開発し、複雑な通過流量波形を示す僧帽弁位における弁運動に関して検討した。in vivoにおける僧帽弁通過流量波形(左室流入血流)は二峰性及び単峰性とされており、ここではコンピュータ上でそれらの流量波形を作成しシミュレータ内で人工弁を駆動することで、高速CCDカメラによる運動計測を行った。実験には、Omnioarbon弁、Björk-Shiley弁、Medtronic-Hall弁いずれも25mmを用い、他の実験条件は循環流量4.0L/min、BPM=70、S/D比=0.3とした。その結果、二峰性の流量波形による弁駆動を行った場合、単峰性流量駆動と比較して、最大開放位で流量波形が二峰の中間となる時(流量がほぼ零)、不安定な弁運動を行うことを全ての弁に対して確認した。また、流量が減少するにつれて、不安定な弁運動を示すことを確認した。