人工臓器
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23 巻, 1 号
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  • 三宅 仁
    1994 年23 巻1 号 p. 1
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 腰地 孝昭, 織田 禎二, 西村 和修, 岡本 好史, 伴 敏彦
    1994 年23 巻1 号 p. 3-6
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    腹直筋を用いた新しい心外膜形成術(Pericardiomyoplasty)を考案し、雑種成犬8頭(体重12~18Kg, 平均14Kg)を用いて正常心時と心不全作成時における両心補助の可能性を検討した。コンディシヨニングを行っていない左側腹直筋(2.5g/Kg)を剥離して胸骨正中切開下に内胸動静脈を温存した有茎グラフトを作成し、心外膜前面を窓状に切除したあとに置換した。急性心不全はプロプラノロール2mg/Kg静注とボリューム負荷にて作成した。腹直筋に入る切断された三本の肋間神経を心電図同期3:1で同時にバースト刺激(50Hz,6v)することにより正常心群では大動脈収縮期圧、右心室収縮期圧、一回拍出にともなう大動脈血流量はそれぞれ8.6%、53.6%、18.1%増加した。心不全群ではこの増加がより顕著であった。この実験では少ない筋肉量でも腹直筋が両心補助手段として用いうることが示唆された
  • 江郷 洋一, 中島 博, 金子 三蔵, 安藤 博文
    1994 年23 巻1 号 p. 7-9
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Cardiomyoplastyへの応用を前提として、広背筋の収縮様式を画像処理により形態学的に検討した。全身麻酔下に成犬5頭(12kg~19kg、平均14.5kg)の左広背筋を剥離し、神経・動静脈を温存した有茎筋グラフトを作成した。刺激電極は胸背神経中枢部に、不感電極は7.0cm末梢に装着した。刺激装置はCMS(Telectronics社製)を用い、電圧2.5V、パルス幅0.25msec、30Hz5回、60回/分のバースト刺激を加えた。筋表面に2cm間隔の方眼をプリントし、収縮様式を収録し、コンピューターで画像処理を行ない、筋収縮期、弛緩期の各方眼毎の面積、長軸長、短軸長を測定し、収縮率を求めた。その結果、収縮良好部位は中枢側%全長であり、末梢側%全長では収縮不良で、逆に筋収縮時に引き伸ばされる現象が見られ、面積収縮率と長軸短縮率は停止端と起始部で有意差が見られた。
  • ―単一骨格筋駆動ポンプによる両心補助―
    田口 眞一, 四津 良平, 井関 治和, 志水 秀行, 高橋 隆一, 川田 志明
    1994 年23 巻1 号 p. 10-13
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    骨格筋駆動ポンプ(SMPV)による大動脈外カウンターパルセーションは、主に左室の補助効果を目的に研究されてきた。本研究では、このSMPVを右室前面に固定し、右室の補助をも同時に行う方法を考案し、実験的検討によりその可能性を検討した。心収縮期にSMPVが受動的に拡張する力を、直接、外からの圧迫により右室の収縮を補助する力として利用する。今回は、第一段階のみの研究で、実際に右室に密着させないSMPVを作成した。空気駆動型補助心臓ポンプを改良し、骨格筋の収縮でdiaphragmが内方へ移動するようにした。大動脈外カウンターパルセーションを行い、大腿動脈圧、SMPV内圧、SMPV一回拍出量、骨格筋移動距離を測定した。その結果、SMPVは心収縮期に受動的に84mmHgの圧で0.8cm外方に移動した。この圧と外方移動で右室前面を実際に圧迫する可能性を持つことが確認でき、この新しい手術法の可能性はあると考えられる
  • 遠藤 真弘, 西田 博, 小柳 仁, 筒井 宜政
    1994 年23 巻1 号 p. 14-17
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    IABP挿入時の出血の一番多い原因は10F前後の太いシースとその中に残された0.035インチの細いガイドワイヤーとの間隙が大きく、ガイドワイヤーに沿わせてバルーンカテーテルを進める間に出血が生じる。これを手技的に出血を少なくするには(1)ガイドワイヤーとシースとの間隙を用手的におさえるが、強くおさえるとガイドワイヤーが折れ曲る。(2)ガイドワイヤーに沿わせてバルーンカテーテルをすばやくシースの中に挿入すれば良いが、不慣れの助手を相手とする時に出血する。(3)この出血を防止する為に、すでに弁付シースがある。しかしながら弁部の抵抗が高く、バルーンの破損が生じ得る。以上の事を解消すべく、我々は新たな止血栓付シースを開発したので報告する。開発製品はシースの遠位部にあらかじめ附着した止血栓で、ガイドワイヤーを残して、ダイレーターを抜去した際、すばやく、シースとガイドワイヤーの間隙を瞬時に埋め、止血できる止血栓である
  • 西元寺 秀明, 豊平 均, 下川 新二, 橋口 雅彦, 福田 茂, 増田 宏, 井畔 能文, 森山 由紀則, 戸田 理一郎, 山下 拓哉, ...
    1994 年23 巻1 号 p. 18-21
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患手術224例中57例(25%)の周術期にIABPを使用した。年齢は38-91歳(平均66.8歳)、CABG、VSP閉鎖、その他各々39、16、2例である。術前、術中、術後の使用は33、15、9例で、各20、11、8例がIABPより離脱した(68.4%)。LOS、体外循環離脱困難、狭心症の離脱率は68.6%、71.4%、71.4%だった。CABG74.4%、VSP56.3%が離脱、生存は61.5%、31.3%だった。離脱不能18例中15例をLOSで、離脱後死亡10例中5例をMOFで失った。6例にIABP+VAB、2例にIABP+LVASを施行、VAB例は全例死亡した。LVAS例は共に離脱したが、1例MOFで失った。生死に関連の因子は年齢、心筋梗塞合併、術式、挿入時期、術後48時間での心係数、術後合併症(LOS、腎不全、肝不全、意識障害、消化管合併症)の発症頻度だった。死因は手術近接期でLOSが、離脱例はMOFが多かった。生存例の81%がquality of lifeの向上を保ち生存している
  • 山西 秀樹, 渡辺 直, 林 和秀, 打田 俊司
    1994 年23 巻1 号 p. 22-24
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    IABPのintroducerに側孔を開けたものを作製し、最も多く経験される下肢虚血の合併予防を試みた。同じIABP製品(TMP社製、9.0Fr)を用いた検討で、従来のシース使用例108例(A群)、径1mmの38個の側孔を開けたin-troducer(10Fr)使用例176例(B群)と、シースレスIABP(Datascope社、9Fr)(C群)とで合併症について比較検討した。A群では16.7%(18例)、B群で5.7%(10例)、C群で3.3%(1例)であった。B, C群はA群と比較して有意に合併症発生率が低かった(共にP<0.005)。B群とC群において発生率に有意な差は認められなかった。IABP挿入側の大腿動脈が細小な症例にも、下肢に血流が維持される側孔の工夫は有用であった。シースレスも下肢虚血防止に有用だが、皮下脂肪の厚い場合や挿入部のdilationが不十分な場合は挿入に無理がかかり血管を損傷する危険があるため、側孔つきintroducerの使用が安全かつ有用であると考える
  • 阿部 裕輔, 鎮西 恒雄, 磯山 隆, 井街 宏, 今西 薫, 満渕 邦彦, 藤正 巌
    1994 年23 巻1 号 p. 25-29
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    2個の小型容積型連続流血液ポンプ(Precessional Displacement Pump: PDP)および1個のモーターを用いた完全埋込型人工心臓の設計を行い、プロトタイプとして2種類の左心用PDPを作製した. 作製された左心用PDPのの最大連続流出力は、内容積22mlのものでは120mmHgの負荷圧で20L/分であり、内容積16mlのものでは125mmHgの負荷圧で19L/分であった. 一個のモーターで左心と右心のPDPを切り替える方法としては、ワンウエイベアリングをそれぞれのPDPに逆方向に取り付け、モーターを正転逆転させることにより行うことにした. 内容積16mlの左心用PDPを2個用い、1個のモーターで2つのPDPを駆動する実験では、平均負荷圧100mmHgで最大7L/分の拍動流出力が得られ、PDPを用いた拍動流完全埋込型人工心臓が実現可能であることが示された
  • 佐久 間一郎, 田所 博幸, 福井 康裕, 大原 康壽, 高谷 節雄, 能勢 之彦
    1994 年23 巻1 号 p. 30-34
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    遠心血液ポンプの設計にあたっては、ポンプ部品表面コーティングなどの材料的な対策も重要であるが、ポンプ内部の流れの状態が、その血球破壊特性や血栓発生部位に大きく影響を及ぼすことが明らかになってきている。本研究では、遠心血液ポンプ設計のための基礎検討を目的に、遠心ポンプ内流れを油膜法、高速度ビデオカメラを使用するトレーサ法の両方法で可視化し、これと遠心ポンプの性能がどのように関係するかについての基礎的な検討を行った。ベーン角度が不適切であり、流れの方向が急激に変化したり、渦の発生が認められる場合には、血球破壊の程度が大きいことがin vitro溶血試験の結果から示された。また、インペラ背面に補助ベーンを設けることにより、インペラ背面部に軸方向に向かう流れと、インペラ外周方向に向かう流れを発生できることが可視化結果より確認され、ポンプの抗血栓性向上に有効なwashout効果を促進することが示唆された
  • 壁井 信之, 桜井 靖久, 土屋 喜一
    1994 年23 巻1 号 p. 35-40
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    本研究では筋収縮の原理として矢野らの静電モーターモデルを用い, バイオミメティックの手法により無機物質からなるバイオアクチュエータとしての人工心筋を実現することを目標とした. まず簡単な静電リニアアクチュエータ(以後基本素子と呼ぶ)について駆動に関する解析を行い, 人工心筋の実現化に有効なアクチュエータの推力増強法について検討した. この検討結果に基づいて, 基本素子を製作したところ200[V]で6.64±0.79[mN]の力を発生した. 次に単位面積当たりの推力を増強するために, 基本素子を小型集積化したことにより, 200[V]で42.3[mN]の推力を得ることができた. この結果, 可動子と固定子の隙間をそのままにしてアクチュエータの断面の一辺の長さを0.1[mm]程度までマイクロ化を計った場合, 30[cm]の長さでストローク5[cm], 単位面積当たりの出力が5[kg/cm2]と生体の筋肉とほぼ同等の出力が得られることが分かった.
  • ―信号伝送特性の改善―
    野村 徹, 矢崎 孝弘, 越地 耕二, 周 英明, 宇都宮 敏男, 丹羽 真一郎, 穴井 博文, 増澤 徹, 妙中 義之, 高野 久輝
    1994 年23 巻1 号 p. 41-46
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    生体内の情報を生体外へ取り出すために、省電力でEMI(電磁環境障害)に強い光を用いたデジタル伝送方式を採用している。赤外LED(Light emitting diode, 発光ダイオード)とPT(Phototransistor, フォトトランジスタ)を皮膚を介して配置する(経皮光カップラ)ことにより、赤外光による経皮的な情報伝送が可能となる。ここでは、経皮光カップラ部における伝送信号波形の遅延や光素子の装着ずれなどによる伝送特性の劣化に対して改善を試みたので報告する。受信側に波形整形回路を設けたり、経皮光カップラの光素子数を複数個配置したりすることによって、従来の経皮光カップラと比較して、2倍以上の位置ずれまで伝送可能となった。また位置ずれに対するマージンを12mmまでとれるシステムを設計する場合、従来のものと比較して8倍の伝送速度(19200bps)で伝送ができることも明かになった。また、人工心臓の水循環模擬負荷装置を用いてのin vitro評価や、成山羊を用いてのin vivo評価も行い、伝送速度19200bpsまで安定した情報伝送が可能であることを確認した。
  • 山口 敦司, 井手 博文, 井野 隆史, 安達 秀雄, 水原 章浩, 川人 宏次, 村田 聖一郎
    1994 年23 巻1 号 p. 47-51
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    経皮経大動脈弁的に左室内に挿入し左室流量補助を行う脱血力ニューラと, 下行大動脈内で拍動流を付加するバルーンとをあわせもつカテーテル(Integrated cardioassist catheter; ICAC)を用いた臨床治験例を経験した。症例は, 61歳男性。LAD急性閉塞, DOAにて当院に搬送され, 心肺蘇生下にPCPSおよびIABPを装着し, PTCAを行ったが, 左心構能は改善せず, 発症30時間後にICACに移行した。ICAC装着には30分を要したが, その後尿量増加と乳酸値の減少, 超音波検査における心機能改善が認められた。補助流量は1.8L/minが得られたが, 遊離ヘモグロビンは正常範囲内であった。入院時にすでに発症していたと思われた出血性脳梗塞のため, 入院6日後に死亡したが, 剖検で各臓器の血栓塞栓症は認められなかった。重症左心不全に対する迅速で簡易な補助循環法として, 本法は臨床使用可能であることが示唆された。
  • 高浜 龍彦, 金井 福栄, 大西 清, 成瀬 好洋, Y. KANEKO, 古瀬 彰, 吉竹 毅
    1994 年23 巻1 号 p. 52-55
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    LVAD施行中の抗凝固療法について、抗トロンビン剤(heparin. argatroban)投与、protease inhbitor (nafamostat mesilate)投与、抗血小板剤(prostacyclin誘導体、thromboxane A2合成酵素阻害剤)投与、前二者の併用投与、plasmin剤(urokinase)投与などの系統別に比較検討を行い、次のような結果が明らかとなった。heparin、argatrobanなどの抗トロンビン剤は出血傾向を生じる。urokinase単独投与はDICを惹起する可能性がある。nafamostat mesilateは単独投与で内因系血液凝固システムの賦活化を生体の代償範囲内に抑制可能であり抗凝固剤として使用可能であるが、thromboxalle A2合成酵素阻害剤の単独投与では不十分である。nafamostat mesilateに、thromboxane A2合成酵素阻害剤、または、prostacyclin誘導体の併用投与が最も理想的な抗凝固療法であると考えられる。
  • ―自動トリガレベル設定方式の開発―
    穴井 博文, 中谷 武嗣, 佐々木 栄作, 妙中 義之, 赤城 治彦, 増澤 徹, 馬場 雄造, 荒木 賢二, 井上 和重, 榊 雅之, 松 ...
    1994 年23 巻1 号 p. 56-59
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    インピーダンス法を用いた人工心臓駆動モニタリングおよび制御装置によるFull-fill to Full-empty(F/E)駆動制御において, 駆出から充満へのトリガレベルを自動設定する方式を開発した。本方式は, 直前の駆出終了時におけるダイアフラムの位置を完全充満からのポンプ内容積変化量としてインピーダンス法により計測し, それを設定量に一致させるようにトリガレベルを変更するトリガレベル自動探索アルゴリズムである。模擬循環回路での検討において本方式の追従性は良好であり, 慢性動物実験においても本方式により最適なトリガレベルでの駆出制御を行い得た。本方式は人工心臓のF/E駆動制御に有用であると考える。
  • ―血液混合の少ない連続流ポンプの開発―
    磯山 隆, 井街 宏, 鎮西 恒雄, 阿部 裕輔, 満渕 邦彦, 米沢 卓実, 今西 薫, 松浦 弘幸, 河野 明正, 鈴木 晃, 渥美 和 ...
    1994 年23 巻1 号 p. 60-64
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    単一の連続流ポンプの入口と出口に三方切り換え弁を設けて血流を左心系と右心系に交互に拍出することにより拍動流を得る新しい方式の完全人工心臓(流れ変換型拍動流完全人工心臓)は、単一の連続流ポンプしか要さず、しかもコンプライアンスチャンバーも不要のため将来の小型化および体内埋め込みには有利な特徴を持っている。しかし、この方式の人工心臓では酸素加血と非酸素加血の混合が重要な問題である。Sarns社のインペラーを用いた現在のモデルでは平均混合率で30.6%の血液混合が発生した。本研究では、連続流ポンプ内での酸素加血、非酸素加血の撹拌混合の程度を定量的に解析し、ポンプの形式とインペラーの形状によって混合の度合いがどのように変化するかを検討し、遠心ポンプでは20.7%、斜流ポンプでは16.9%にまで平均混合率を減少できた。
  • 小出 訓, 吉澤 誠, 阿部 健一, 竹田 宏, 山家 智之, 仁田 新一, 阿部 裕輔, 井街 宏
    1994 年23 巻1 号 p. 65-70
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    本論文では, 循環系の制御特性を評価するために, 自然心臓により駆動される通常の循環系, および完全置換型人工心臓(TAH)により駆動される循環系から得られるいくつかのパラメータ, すなわち心拍数(HR), 大動脈圧(AOP), および末梢血管抵抗(R)に対し, 周波数解析および相互相関解析を行なった. その結果, HRに揺らぎの無いTAH装着時循環系においても, Mayer wave成分に対応する揺らぎが観測された. このことから, この揺らぎの源はAOP-Rループに存在する可能性が示された. また, TAH装着時循環系の解析により, このAOP-Rループの活動性が, TAH非装着時循環系に比較して, より詳細に推測可能となった. さらに, TAH非装着時とTAH装着時のデータを比較することにより, AORRの相互の変動を抑制する. AOP-HRループの効果が明確に示された.
  • 秋保 洋, 仁田 新一, 山家 智之, 永沼 滋, 柿沼 義人, 井筒 憲司, 小林 信一, 南家 俊介, 田中 元直, 福寿 赴雄, 三浦 ...
    1994 年23 巻1 号 p. 71-75
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左心補助人工心臓(LVAD)を臨床応用する際、より自然心にとって負荷の少ない駆動方法の選択が重要となってくる。駆動方法としては自然心の収縮期に同期させる収縮期駆動と拡張期駆動の2つが挙げられるが、両者の駆動方法の選択に関しては定説がない。本研究では、成山羊を用いた急性実験においてLVADの補助流量を一定に保つよう制御し、収縮期駆動から拡張期駆動へ変化させたときの末梢血管抵抗および自然心の流出路での抵抗を検討した。その結果、LVADの駆動時相を収縮期駆動から拡張期駆動へ変化させることにより、末梢血管抵抗の有意な変化なく、自然心の流出路での抵抗が有意に減少し自然心の拍出量の増加が認められた。したがって、LVADの駆動時相としては収縮期駆動より拡張期駆動が、自然心および生体にとってより負荷の少ない駆動方法であることが示唆された。
  • ―コンダクタンスカテーテルを用いた圧容積関係からの評価―
    朴昌 禧, 北野 満, 西村 和修, 岡本 好史, 伴 敏彦
    1994 年23 巻1 号 p. 76-81
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    コンダクタンスカテーテルを用いた右心室圧容積関係から右心室のEmax(RVEmax)を測定し、左心補助中の右心機能について評価した。左心補助のOn Offによる評価のみにとどまらず、両心不全心を作成し、左心補助流量を変化させた時の右心室拡張終期容積(RVEDV)の変化とRVEmaxの変化との関係も検討した。正常心においては、左心補助によりRVEmaxは変化しなかったが、不全心では、左心補助によるRVEDVの増加に伴いEmaxの低下を認めた(395±0.93(mmHg/ml)vs. 3.00±1.36(mmHg/ml), p<0.05)。このErnaxの変化は、左心補助流量の変化よりも、RVEDVの変化に対してより鋭敏に相関した。不全心における左心補助では、右心室の後負荷が上昇した場合、RVEDV増加に伴う右心室拍出量増加よりも、RVEmax低下に伴う拍出量低下が顕在化することになる。これが臨床の場で遭遇する左心補助中の右心不全の本質ではないかと推測された。
  • 斎藤 憲, 中山 卓, 諸 久永, 大関 一, 林 純一, 宮村 治男, 江口 昭治
    1994 年23 巻1 号 p. 82-86
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    親水性化合物と疎水性化合物の共重合体によるミクロ相分離構造は血小板の粘着を抑制する作用のあることが知られている。われわれはミクロ相分離構造に強力なすべり性化合物を混合させたポリマーを補助循環回路に応用し、その抗血栓性の実験的評価を試みた。ブタ4頭を用い、24時間のV-Aバイパスを施行し経時的に血小板数、フィブリノーゲン、フィブリノペプタイドAを測定した。さらに24時間後の回路の内表面を走査電子顕微鏡で観察した。結果はバイパス開始後6時間までは血液マーカーの変動は少なく血小板のチューブ表面への粘着は抑制されていたと考えられた。24時間後の回路内表面の観察では乱流が発生する部位では血栓形成や血小板の活性化の所見を認めたが、送血側の口径の一定な部分には血栓を認めず、血小板の活性化の所見はごく軽度であった。コーティング技術や回路の設計に改良の余地があり、今後さらにすぐれた抗血栓性材料となる可能性がある。
  • ―有効性と限界点に対する評価―
    朽方 規喜
    1994 年23 巻1 号 p. 87-91
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は, Buckbergらの提唱する拡張期圧時間係数(DPTI)を張力時間係数(TTI)で除する方法により算出される心筋酸素需要供給比(SDR)の理論をもとに, SDRを自動算出する装置を開発し臨床応用してきた。体外循環離脱時より生じる虚血心20例を対象として, 他の循環諸量, 即ち冠静脈洞血酸素飽和度, 熱希釈法より得られたデータおよび生化学的所見と比較し, 本装置から算出されるSDRが心機能評価法の指標として有用であるか否かを検討した。その結果, 本装置から算出されるSDRは, リアルタイムに心筋酸素摂取率を推察可能と考えられ, 開心術後の心筋酸素需要供給比が充分に予測されうると思われた。しかしながら生化学的心筋代謝を直接推察しうる指標とは成り得なかった。今後は, 従来の熱希釈法のデータとともに, 本装置で求めたSDR値を参考にすることにより, より正確な心血行動態を把握し得ると期待された。
  • ―PCPSの臨床応用に向けて―
    中沢 直, 長谷川 隆光, 塩野 元美, 折目 由紀彦, 井上 龍也, 三室 治久, 中田 金一, 秦 光賢, 瀬在 明, Hossain ...
    1994 年23 巻1 号 p. 92-96
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    拍動流を有する補助人工心臓と, 小型膜型人工肺の両者の利点を合わせ持つ補助循環装置を考案試作し, 呼吸循環不全モデルに対して, 急性実験でその効果を検討し, その有効性を確認後, この装置を成ヤギに装着し亜急性実験において, 溶血, 血栓の検討を行なった。本装置は, 経皮的カニュレーションで駆動可能であった。ヤギは6時間から最長76時間生存し良好な全身状態が保たれた。補助流量は平均1200ml/分で, 血液ガスデータでは, PaO2:150~40mmHg, SaO2: 98~100%, :PaO2: 22~45mmHgと良好な値を維持した。Hb, Hctの低下は起こらず, 血漿遊離Hbは5~35%mg/dlと低レベルで推移した。駆動停止後の回路内には有意な血栓形成はなく亜急性実験において著明な溶血, 血栓は認めなかった。本装置は, 小型で簡便な操作性の安易な補助循環装置であり, 血栓, 溶血の程度は少なく, PCPSとして臨床応用可能であると思われた。
  • 中谷 武嗣, 穴井 博文, 荒木 賢二, 脇坂 佳成, 妙中 義之, 赤城 治彦, 増澤 徹, 馬場 雄造, 巽 英介, 渡 正伸, Yh. ...
    1994 年23 巻1 号 p. 97-101
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    簡便な右心補助システムとしての経皮挿入右心補助法について, 動脈内軸流ポンプ(Hemopump)を応用して基礎的検討を行なった. 先ず, Hemopumpに肺動脈より挿入するカニューラを装着し, 成山羊を用いた急性実験で肺動脈より挿入し駆動したところ, 良好な右心補助効果を示し, 肺動脈弁の逆流も認めなかった. 次いで, 経皮的末梢静脈挿入用に設計したロータとステータおよびカニューラを装着したポンプシステムを作成した. モック回路にてその流量特性を検討したところ, 圧較差40mmHgにて40l/minの流量が得られた. 成山羊を用いた急性実験において, 腎静脈流入部より末梢側の下大静脈に吻合した人工血管より肺動脈への挿入は特に問題なく施行可能であった. また, 肺動脈高血圧を作成してもポンプ駆動により循環維持が可能であった. 今後本システムは簡便・強力な右心補助法になり得ると考える.
  • 川人 宏次, 井野 隆史, 安達 秀雄, 井手 博文, 水原 章浩, 山口 敦司, 村田 聖一郎
    1994 年23 巻1 号 p. 102-106
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    胸部下行大動脈や胸腹部大動脈手術の補助循環として、抗血栓性を付加した部分体外循環法を臨床応用した。本システムは遠心ポンプ、膜型肺、経皮的体外循環用カニューラ、チューブ類からなる閉鎖回路で回路の血液接触面はヘパリンコーティングを主とする抗血栓性材料でコーティングした。また大量出血に備えて、側回路にリザーバー付きの急速返血回路を設置した。このシステムを50U/kgの少量ヘパリン投与で、Activated coagulation time(ACT)を200秒前後に維持し、4例の下行大動脈瘤、2例の胸腹部大動脈瘤手術に使用した。2
    例を術後腸管壊死で失ったが、システム自体に起因する合併症の発生はなく術中出血を良好にコントロールできた。本法は従来の部分体外循環法の欠点であった出血合併症を防ぐうえで有用であると考えられた。
  • 今西 薫, 井街 宏, 磯山 隆, 阿部 裕輔, 鎮西 恒雄, 満渕 邦彦, 藤正 巖, 城間 賢二, 須磨 幸蔵
    1994 年23 巻1 号 p. 107-113
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    われわれは経皮的にアプローチが可能で圧補助、流量補助が可能な補助循環装置を開発中である。従来型即ちMAD-Type1, Type2は最大流量の点でそれぞれ0.58l/min, 1.19l/minであった。そこで今回より有効な流量を得るために、カニューレ、流入弁、流出弁のデザインを改良したMAD-Type3a, MAD-Type3bを開発した。模擬循環回路により以下のような最大流量を得た。Type3-aが1.53l/min, Type3-bが2.05l/minであった。Type3-bでは流量は後負荷を0-100mmHgに増加させても1.6l/minを下回る事はなかった。雑種成犬を使用したIn vivoでの検討では心不全状態で洞調律、心室ペーシング、心停止という条件下で駆動した結果、いずれの条件下でも大動脈流量、冠状動脈流量共に増加し、大動脈圧波形にも有効な補助循環効果を認めた。以上よりMAD-Type3は従来型と比較してより強力な補助循環装置であると考えられた。
  • 岡田 健志, 笹子 佳門, 中谷 武嗣, 渡 正伸, 安藤 太三, 安達 盛次, 高本 員一, 高野 久輝, 川島 康生
    1994 年23 巻1 号 p. 114-118
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Elephant trunk法(E法)術後の心機能低下症例に対し右大腿動静脈からの送脱血による動静脈バイパス(VAB)と上行大動脈から挿入したIABPによる循環補助を行った。突然左上腕動脈圧が20~30mmHgに低下し、圧波形は平坦になった。このとき大腿動脈圧は200mmHgを示した。かかる現象の発生機序を明らかにするためにMOCK回路を用いてE法術後の不全心モデルを作成し、IABP, VABの組合せによる循環補助について検討した。intra-aortic balloon(IAB)を人工血管から10cm出た位置で固定し、上下半身血量比(Qu/Q1)が1になるように上下半身の血流抵抗を設定した。ここでIABPを作動するとQu/Q1は0.18と低下し、下半身への血流偏位を生じた。また小口径人工血管のE法では、IABP作動時に人工血管の拍動性の圧縮、変形を認め、非固定端方向へのポンプ作用が明らかになった。E法術後の心不全に対する循環補助手段としてIABPを積極的に用いるべきではないと考えられた。
  • ―VADか, V-Aバイパスか?―
    村上 泰治, 久持 邦和, 甲元 拓志, 高垣 昌巳, 名和 清人, 清水 信義, 川上 俊爾, 山田 真人, 喜岡 幸央, 入江 博之, ...
    1994 年23 巻1 号 p. 119-123
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    過去5年間に術後心原性ショック15例に対し補助人工心臓(VAD)を用い, 5例に対し経皮的心肺補助装置(CPS)を用いた。VAD患者の年齢は22から73歳(平均55), 男8例, 女7例である。9例は弁置換5例は冠動脈バイパス, 1例は心室中隔穿孔閉鎖を行った。補助循環時闇は6時間から9日(平均3.9日)であった。CPS想者の年齢は49から68歳(平均57), 男4例, 女1例である。1例は弁置換, 1例は冠動脈バイパス, 2例は胸部大動脈瘤置換術, 1例は左室瘤切除を行った。CPS時間は4時間から8日(平均2.8日)であった。VAD患者は13例が離脱し, 8例が生存した。合併症は出血5, 腎不全4, 感染3, 心不全4, 脳梗塞1, 術中心筋梗塞1, 不整脈1, イレウス1であった。VAD患者8例の追跡期間は2から56カ月(平均28カ月)で, 5例がNYHA1度, 2例が2度, 1例が3度であった。CPS患者は4例が離脱し, 3例が生存した。合併症は出血3, 腎不全2, 心肺不全1であった。CPS患者3例の追跡期闇は6から18ヵ月(平均10カ月)で, 2例がNYHA1度, 1例が3度であった。V-Aバイパスは, 補助循環からの離脱率においてVADと同様優れた成績を示したが, 重篤な合併症が見られた。
  • 内山 賢一, 藤沢 直毅, 島崎 祥人, M. RANAWAKE, 藤本 哲男, 梅津 光生
    1994 年23 巻1 号 p. 124-129
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    補助心臓用ポリウレタン製三尖弁(PU弁)を自動的に製造するためにアームロボットを用いたPU弁自動製作システムを開発した. このシステムの導入により, 弁葉の膜厚を意図的に製作し, PU弁を構成する三枚の弁葉の画一性を実現する試みを行った. この結果, 理論解析により応力が集中すると考えられる箇所の膜厚を局所的に増加させることが可能となり, 更に膜厚精度を向上させることができた. また, 同時にヒトの一カ月の生活に相当する耐久性を持つことが判明した. しかし, このシステムの導入により, 実験用として使用できる弁の完成率が25%となり, 従来の手作りによる完成率が47%であったことを考慮すると, 著しく完成率が低下したといえる. 現在のシステムではハードウェア, ソフトウェアに限界があり, システムの構成および機能を再検討する必要があると考えられる. よって, この実験を基礎研究の足がかりとして今後のポリウレタン製三尖弁の製作方法を検討していく.
  • ―Dacroncuff付SJM弁との比較―
    大塚 吾郎, 北村 昌也, 徳永 裕之, 井出 里香, 宮城島 正行, 小澤 英樹, 国井 佳文, 八田 光弘, 西田 博, 中野 清治, ...
    1994 年23 巻1 号 p. 130-132
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    St.Jude Medcal(SJM)弁によるMVRに関しては、溶血や、perivalvular leakageが臨床上の問題点とされ、人工弁縫着法の工夫がなされてきた。また、sewing cuffの改良も行われ、当科においては1991年3月より、Teflonのsewing cuffを持つSJM弁をMVR時に導入した。SJM弁を代用弁の第一選択とした1980年以降の当施設での、SJM弁による単独MVRは1993年3月までに708例を数える。うち、Tefloncuff付SJM弁は94例(T群)で、再手術例を認めなかった。Dacroncuff付SJM弁は、614例に使用し、早期死亡19例(3.1%)、13年実測率78%と良好であったが、再手術を11例に認め、うち8例が溶血とperivalvular leakageに起因するものであった。この8例中、7例は僧帽弁位手術既往例であり、弁輪の硬化等の存在が示唆された。T群においても12例の僧帽弁位手術既往例が存在したがいずれもperivalvular leakage、溶血等を来さなかった。両群間で、LDH値の推移を術前後で観察したが有意差はなかった。
  • 大越 隆文, 野一色 泰晴, 冨澤 康子, 江郷 洋一, 小柳 仁
    1994 年23 巻1 号 p. 133-136
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ポリエポキシ化合物(PC)処理による生体弁(PCvalve)の抗血栓性を評価した。雑種犬より採取した大動脈弁をPCで架橋した。PCvalveの中枢側及び末梢側に人工血管を縫着してconduitとした。対照としてグルタールアルデヒド(GA)で架橋処理した大動脈弁(GAvalve)を用いて同様のconduitを作製した。これらのconduitを雑種犬に右室-肺動脈バイパスグラフトとして植え込み, 主肺動脈を結紮し, 生存犬を作製した(右心系モデル)(PCvalve:8頭, GAvalve:8頭)。またconduitを左室心尖部-下行大動脈バイパスグラフトとして植え込み, 下行大動脈をその起始部で結紮し, 生存犬を作製した(左心系モデル)(PCvalve:2頭, GA valve:1頭)。右心系モデルでは術後14-37日目に, 左心系モデルでは術後7-20日目に標本を採取した。採取された各弁に備わっている3つの弁葉を個々に肉眼的に観察し血栓付着の有無を評価した。右心系モデルでは統計的有意差をもってPC valveのほうがGA valveよりも血栓付着が軽度であった。左心系のモデルでもPC valveのほうがGAvalveよりも血栓付着が少ない傾向があった。従って, PC valveはGA valveよりも右心系および左心系の両系において抗血栓性が優れている生体弁であることが示唆された。
  • 林 純一, 岡崎 裕史, 中沢 聡, 藤田 康雄, 諸 久永, 斎藤 憲, 大関 一, 江口 昭治
    1994 年23 巻1 号 p. 137-141
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/12/02
    ジャーナル フリー
    大動脈弁位に用いた6種8モデルの傾斜円板弁・二葉弁につき、代用弁合併症発生率を比較検討した。血栓塞栓症はBS弁、LK弁、OS弁、SJM弁で各々0.61、0.60、0.54、0.42%/pt・Yであった。血栓弁はBS弁、OS弁で各々0.3, 1.62%/pt・Yに認めた。血栓塞栓症、血栓弁の発生率は傾斜円板弁全体での1.3%/pt・Yと比べ、二葉弁全体では0.34%/pt・Y(p=0.037)と低値であった。一方、抗凝血療法関連死亡、PVE、突然死を含めた代用弁関連死亡は弁種間で差を認めなかった。術後10年の生存率はSJM弁94.2%、OS弁833%、BS弁76.7%、LK弁66.7%で、患者背景を考慮すると差はないと考えられた。選択的に用いたBSmonostrut弁、SJM Teflon cuff弁, CM弁では合併症を認めなかった。以上の結果から、今日の傾斜円板弁・二葉弁はひ比較的合併症は少ないものの、抗血栓症では二葉弁が優れ、また代用弁の特性・構造上の特徴を活かした弁選択も意義あると考えられた。
  • 太田 稔明, 岩橋 和彦, 松田 均, 安宅 啓二, 岡田 昌義
    1994 年23 巻1 号 p. 142-146
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    St. Jude Medical 19mm弁(SJM19)使用例20例(BSAL28-1.56)を、そのBSAによりS群(<1.45, P=10)、L群(≥1.45, n=10)の2群に分け、術後左室後負荷の軽減効果を検討した。連続波Doppler法による術後maximal pressure gradient(maxPG)はS群:L群=30:25mmHg、有効弁口面積係数は1.04:0.95cm2/m2となり、両群間に有意差を認めなかった。左室肥大の術後(平均11ヶ月)reduction rateはSV1+RV5S群24%:L群22%、左室壁厚16%:15%、LVmass30%:26%、cross sectional area 27%:30%となり、いずれも両群間に有意差を認めなかった。M.mode法で求めた心拍邑量(CO)とPGをdobutamine負荷前後で対比したところ、両者にはy=6.14x-10.1, r=0.76の相関が認められ、CO8L/min程度でPG40mmHgと算出された。以上より、SJM19はBSA1.6以下
    の症例に使用すればその左室後負荷軽減効果に重大な問題はないが、COが増加した際の圧較差は無視しえず、できれば高齢者など運動量の比較的軽微な症例に使用すべきと考えられた。
  • ―僧帽弁位および大動脈弁位での検討―
    星野 修一, 今井 康晴, 石原 和明, 澤渡 和男, 中田 誠介, 寺田 正次, 三隅 寛恭, 原 修二, 杉山 喜崇, 小出 昌秋, 大 ...
    1994 年23 巻1 号 p. 147-150
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    小児におけるSJM弁の僧帽弁位(M群)および大動脈弁位(A群)での遠隔成績を検討した。対象は1979年1月より92年12月までの14年間にSJM弁にて弁置換を行った15歳以下の症例から、A-VおよびV-A discordant症例、二弁置換術症例と病院死亡を除いた症例とした。M群41例43個、A群は大動脈弁置換術7例、今野手術29例で、観察期間はそれぞれ303.8p-ys、184.3p-ysあった。遠隔死亡はM群3例、A群2例で、それぞれの実測生存率は14年で91.7±4.7%、12年で94.4±3.9%と良好であった。人工弁関連合併症は、M群で、nonstructural dysfunction 3例(0.99%/patient-year)、thromboembolism 1例(0.33%/P-y)、thrombosed valve 1例、脳出血1例、prosthetic valve endocarditis 1例であった。A群ではthrornboembolism 1例(0.54%/p-y)のみであった。M群の5例にのみ再弁置換を必要とし、その予測非再弁置換率は14年で71.3±14.3%であった。
  • 藤田 康雄, 土田 昌一, 林 純一, 江口 昭治, 堀 潤一, 斎藤 義明
    1994 年23 巻1 号 p. 151-154
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    時間周波数解析の手法(Wigner-ViUe法)を用いて、SJM弁閉鎖音の実験的解析を行った。閉鎖音の時間周波数分布は1.3~1.5KHzに最大ピークを有し、5KHzまで達していたが、周波数が高くなるほどパワー減弱した。弁サイズを大きくすると1.5~3KHzの領域の出現時間がやや延長した。擬似血栓の付着により、3~5KHzの領域のパワーの減弱が認められた。擬似血栓を大きくすると、1,5~3KHzの領域のパワーの減弱も認められ、さらにその出現時間も短縮し、最終的には、1KHzをピークとする連続性の周波数分布を認めるだけとなった。本法によるSJM弁閉鎖音の解析は、血栓付着により、1.5~5KHzの周波数域のパワーの減弱とともに分布出現時間の短縮も認められ、弁機能不全を早期に、より明確に判断できる可能性があると考えられた。
  • 太田 裕治, 多田 洋子, 土肥 健純, 堀内 孝
    1994 年23 巻1 号 p. 155-159
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    機械式人工心臓弁の運動機構を解明すべく、精密な流量制御が可能なコンピュータ制御水圧駆動式循環系シミュレータを開発し、複雑な通過流量波形を示す僧帽弁位における弁運動に関して検討した。in vivoにおける僧帽弁通過流量波形(左室流入血流)は二峰性及び単峰性とされており、ここではコンピュータ上でそれらの流量波形を作成しシミュレータ内で人工弁を駆動することで、高速CCDカメラによる運動計測を行った。実験には、Omnioarbon弁、Björk-Shiley弁、Medtronic-Hall弁いずれも25mmを用い、他の実験条件は循環流量4.0L/min、BPM=70、S/D比=0.3とした。その結果、二峰性の流量波形による弁駆動を行った場合、単峰性流量駆動と比較して、最大開放位で流量波形が二峰の中間となる時(流量がほぼ零)、不安定な弁運動を行うことを全ての弁に対して確認した。また、流量が減少するにつれて、不安定な弁運動を示すことを確認した。
  • 苗村 潔, 橋本 浩一, 内山 賢一, 加藤 幸俊, 藤本 哲男, 梅津 光生
    1994 年23 巻1 号 p. 160-163
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    左心房収縮が人工僧帽弁の機能に与える影響を検討するため, 1)生体心臓の機能と形態の双方を類似させるための血液循環系の機械式シミュレータの製作, 2)心房収縮を模擬するため2chの補助人工心臓駆動装置(東洋紡績社製;VCT-100)の改良を行なった.
    拍動数75BPM, 心房, 心室駆動空気圧を20/-10mmHg, 150/0mmHgに固定し, 諸種の条件下でポンプを駆動したところ, 人工弁閉鎖時に発生する圧力スパイク(水撃)が激減するところが存在することを見いだした.一例として, 心拡張期520msecのうち, 心室収縮開始の100msec前で50msec間心房を収縮させたところ, 心房圧10mmHg, 一回拍出量50mLとなり, 心房収縮による拍出量変化は微量であったが, 水撃値は心房収縮を行わない場合の60%に減少した.なお, このタイミングは生理学データに近いものであった.僧帽弁流量など心機能のシミュレーションは, まだ改良の余地があるが, 2室の収縮タイミングが弁の開閉挙動に大きな影響を与えていることが示された.
  • 磯村 正, 久冨 光一, 平野 顕夫, 佐藤 了, 大橋 昌敬, 田山 栄基, 田中 攻, 西 義勝, 川良 武美, 押領司 篤茂, 青柳 ...
    1994 年23 巻1 号 p. 164-166
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1980年から1992年の間にS謝弁による僧帽弁置換術(MVR)を施行した583例を対象とし、MVR後早期及び遠隔期成績について検討を行った。年齢は平均51.1歳で、S測弁の弁縫着方向は、1983年までの143例はanatomical positionに、以後の例ではanti-anatomical positionに置いた。術後の抗凝固療法は、ジピリダモール300mg/日およびワーフアリンの内服療法を行った。術後遠隔調査を行い、90%の例で追跡調査が可能で, 総追跡期間は3176 patient-yearsであつた。早期死亡は18例であつた。術後のvalve-related eventは0.97/100 patients-yearsにみとめ、抗凝固療法に起因する脳合併症が最も多く、0.66/100 patient-yearsにみられた。遠隔期に人工弁に起因する死亡は0.41/100 patient-yearsであつた。512例の遠隔成績では, 5, 10, 12年生存率は91.2%, 87.8%, 85.2%で, 術後89.1%がNYHAI~II°であつた。SJH弁の術後長期における耐久性は優れており、術後の十分な抗凝固療法により良好な症状の改善が得られた。
  • 田中 利明, 井上 聡巳, 木村 希望, 安倍 十三夫, 小松 作蔵
    1994 年23 巻1 号 p. 167-170
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1985年2月より1993年4月までに施行された中心開放型二葉弁による単独僧帽弁置換術症例のうち, 術後安静時および運動負荷時に心臓カテーテル検査を施行し得たSJM弁30例(S群), Duromedics弁30例(D群), CarboMedics弁19例(C群)について血行動態, 弁機能について比較検討した。心係数, 肺動脈収縮期圧, 平均肺動脈模入圧, 左室拡張終期圧では運動負荷により増加するものの3群間に有意差はみられなかった。弁サイズ27mm, 29mmにおける弁圧較差, 有効弁口面積においても運動負荷時に増加するものの3群間に有意差はみられなかった。また, 術後1ヵ月のLDH値でも3群間に有意差を認めず, これらの中心開放型二葉弁はほぼ同様の弁機能を有していた。
  • 桑原 正知, 鬼塚 敏男, 中村 都英, 福元 廣次, 古賀 保範
    1994 年23 巻1 号 p. 171-173
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    SJM弁による弁置換術を施行され10年以上経過した症例について検討した. 対象は1983年以前に弁置換術を受け手術死亡, 病院死亡を免れた44例とした. 大動脈弁置換7例, 僧帽弁置換31例, 両弁置換5例, Ben椥11手術1例であった. 遠隔死亡のうちSJM弁関連死は2例(人工弁感染, 血栓弁)であった. 術後14年の生存率は87.3%, Thmmboembolism free rate92.4%, Re-operation free rate90.0%, PVE free rate97.6%であり, valve-related event free rate89.7%であった. 現在NYHA I度26例, II度7例, III度1例であった. 心エコーではNYHA II, III度ではI度よりTR合併例が多かったが人工弁の圧較差には差はなかった. SJM弁は長期遠隔成績が安定しておりQuahty of Lifeも良好であり, 今後も第一選択弁として用いていく方針である.
  • ―経食道心エコーを中心とした評価―
    渡辺 正明, 岩谷 文夫, 猪狩 次雄, 萩原 賢一, 佐戸川 弘之, 緑川 博文, 佐藤 洋一, 小野 隆志, 小川 智弘, 星野 俊一
    1994 年23 巻1 号 p. 174-179
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    僧帽弁位に一葉弁であるOmniscience(OS)弁を1980年以降約5年間, Medtronic-Hall(MH)弁を1982年以降約8年間使用してきたので術後遠隔期における人工弁機能および心機能につき比較検討した。経食道心エコーを中心としたドプラー心エコー法により27mm, 29mmで最大圧較差はOS弁3.5±3.0mmHg, MH弁3.0±2.7mmHg, 最大流速はOS弁0.82±0.43m/sec, MH弁0.76±0.41m/secであり, 心機能, Obligatory Regurgitationも両弁間に差はなかった。しかし, Pressure Half TimeはOS弁100.5±33.3msec, MH弁82.8±20.1msecとOS弁で長く(p<0.01), また有効弁口面積はOS弁2.31±0.70cm2, MH弁2.85±0.56cm2とOS弁で小さかった(p<0.05)。弁開放角は術後長期になるほどOS弁で減少傾向にあり, PHTと密な関係にあった。弁機能不全による再僧帽弁置換11例では弁開放角が22~45°平均35°であり, 今後OS弁症例では症状の有無に関わらず厳重な経過観察が必要と考えられた。
  • 新谷 英夫, 中埜 粛, 島崎 靖久, 谷口 和博, 宮本 裕治, 安田 治正, 古谷 保博, 松田 暉
    1994 年23 巻1 号 p. 180-183
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    僧帽弁位のCarboMedics弁置換例14例を対象として、弁の非同期的運動を観察し、弁機能との関連を検討した。術後平均15日目に心エコー法を用い、弁逆流を評価し、有効弁口面積を算出した。術後平均4.5ヶ月目にcineradi-ographyを用い、discの開放角度を計測した。溶血の程度をLDHの推移から評価した。平均追跡期間は6.7ヶ月で、人工弁に起因するeventは認めていない。術後LDH上昇の程度と弁サイズに関連はなかった。心エコー法により弁逆流を認めた症例はなかった。有効弁口面積は実質弁開口面積とほぼ一致し良好に保たれていた。discの開放角は、前交連側77.8°, 後交連側78.4°で設計開放角78°と一致した。14例中8例で二葉の弁葉の非同期的運動を認め、うち2例で非同期的閉鎖が観察され、聴診上人工弁clickの消失を認めたが、弁機能は満足し得るものであった。非同期的運動を示した例では全て心房性不整脈を伴っており、人工弁機能に関し遠隔期にわたる観察が必要であると思われた。
  • 木村 元彦, 杉浦 敏文, 木村 泰三, 原田 幸雄
    1994 年23 巻1 号 p. 184-187
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    導電性と、柔軟性を有するカーボン線を、フィブリン糊で心筋に接着して使用することのできる心外膜ペーシング用のペーシングリードを提案した。3頭の雑種成犬の右房部分に試作したペーシングリードを埋め込んだ。埋め込み後約1週間、ペーシング閾値および電極間インピーダンスを測定した。ベーシング閾値は、3例共、5Volt以下の良好な値を示した。電極間インピーダンスは300Ω~700Ωの良好な値を示した。植え込み後約1週間後に、開胸下でリードを抜去し、抜去に要する張力を測定した。植え込み後1週間後における電極の密着力は、約100gwであった。リードの抜去に伴う出血は全く無く、安全にリードの抜去ができることが判った。
  • 勝本 慶一郎, 新堀 立
    1994 年23 巻1 号 p. 188-192
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ペーシング電極は、植え込み後7-10日後までに異物反応により刺激閾値の上昇をきたす。
    我々は、ガラス状カーボン電極表面よりステロイドを溶出させることによって刺激閾値を低下させることができるかどうか検討した。燐酸デキサメタゾンナトリウム(DSP)を電極挿入時に、ジメチルシリコンオイルに溶いて電極表面に塗布する方法はあまり効果が見られなかった。そこで、ガラス状カーボン製のDS58V電極に直径300μmの4ヶの孔をあけ、その中にDSPをシリコンゲルに分散させたものを充填する方法を行った。その結果、心房ならびに心室ペーシングのいずれも植え込み後7日目のエネルギー閾値が充填していない群と比較して低く抑さえられた。市販のCapsure 4003型電極と比べ、ステロイド溶出DS58V電極はエネルギー閾値上昇が低く、初期目的は達成された。しかし、遠隔期の閾値は、今後さらに検討が必要である。
  • 山本 豊
    1994 年23 巻1 号 p. 193-198
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ペースメーカー内蔵レートプロファイル機能(Intermedics社 DASH)を用い、一連の日常労作時の健常人の洞調律変動と、胸壁に装着したペースメーカー(DASHおよびMedtronic社LEGEND II)のレート応答とを比較した。DASHについては、redraw機能を用い、1回の労作試験により得られたレートプロファイルを、異なったレート応答パラメーター設定下でのレートプロファイルに作成し直し、洞調律変動と比較検討した。その結果、ペーシング調律では過剰応答、過小応答、応答遅延などが認められ、パラメーターの調整のみでは日常労作における洞調律変動に近似させることは困難であった。このことは、体動センサーのみによるレート応答ペーシングの限界性を示すものと思われ、2種以上のセンサーによるレート応答システムの開発が必要であると考えられた。レートプロファイル機能とredraw機能を用いた本研究方法は、レート応答性の評価に有用であった。
  • 高木 孝之, 水品 静夫, 杉浦 敏文, 木村 元彦, 木村 泰三, 原田 幸雄
    1994 年23 巻1 号 p. 199-202
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は、マルチセンサー型心臓ペースメーカーにおける制御アルゴリズムにファジイ制御を用いることを提案しており、前回の本大会においてダブルセンサーシステムにおける制御規則の自動生成法について提案し、例として分時換気量(MV)と酸素飽和度(OS)を用いてその有効性について報告した。その結果、ファジィ・レートと目標とする心拍数とは全体において良好な一致を示したが、運動終了後の自発心拍数は運動前のそれよりも少し高いレベルを保つのに対しファジイ・レートは運動前後の差を再現しにくいという問題があった。この点を改善するために運動前後において変化のある指標を新たに加え、3入力指標によるレート制御の可能性を検討した。3番目の指標として体温を用いた。その結果、運動後のファジイ・レートは運動前の安静時よりも少し高いレベルを保ち、なだらかに減少させることができた。本手法はマルチセンサー型ペーシングにおける有望な制御法と思われる。
  • 石川 利之, 木村 一雄, 海老名 俊明, 臼井 孝, 柏木 政伸, 石井 當男
    1994 年23 巻1 号 p. 203-206
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    洞不全症候群(SSS)連続30例(65.7±10.0<SD>歳)において、disopyramide phosphate(DP)静注(2mg/kg, ≦100mg)を併用したover-drive suppression test(ODST)の有用性について検討した。SSS30例中13例43%ではODSTは陰性であった。これらの症例で、DP静注後sinus node recovery time(SNRT)は1590±300msより3020±1110ms(p<0.01)に、corrected sinus node recovery time(CSNIRT)は510±180msより1970±1160ms(p<0.01)となり、13例中10例77%で陽性となった。全体として、DP静注の併用により、30例中27例90%で陽性となり陽性率が改善した(p<0.01)。一方、洞機能正常11例ではDP静注後全例でODST陰性であった(SNRT:1370±390msより990±310ms, SNRT: 390±260msより250±130ms)。DP静注により心拍数、血圧に有意な変化はなく、DPの血中濃度は4.1±1.0mcg/mlで、major side effectは認められなかった。DP静注を併用したODSTの有用性が示された。
  • 柵木 隆志, 有木 弘, 高木 靖, 保浦 賢三, 阿部 稔雄, 村瀬 允也, 石原 智嘉
    1994 年23 巻1 号 p. 207-211
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    経静脈ポリウレタン被覆心房電極382本を対象として, リード不全による電極使用中止の時点を電極の寿命と定義し, 電極の耐用率をKaplan-Meier法にて算出して比較検討した。モデル別の耐用率は, 6991U型では12.5年にて38%, 6990U型では14年にて93%, 4502型では11年にて91%, 4512型では9年にて87%, 4504型・4524型ではおのおの4年・2年まで100%であった。6991U型の耐用率は他のモデルと比較して, 有意に(p<0.01)低値を示し, 今後も注意深い観察が必要と思われた。その他のモデルの耐用率は良好であった。また全心房電極の耐用率は5年にて97%, 10年にて85%, 14年にて77%であり, 平均耐用年数は12.8年であった。現時点において, ポリウレタン被覆心房電極の10年以上の耐用率は不良であると思われた。
  • 井関 治和, 加藤木 利行, 相馬 康宏, 四津 良平, 上田 敏彦, 田口 真一, 志水 秀行, 川田 志明
    1994 年23 巻1 号 p. 212-215
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    当院において過去20年間に施行したペースメーカー植え込み術は総数346件であり、そのうち小児症例は24例であった。小児ベースメーカー植え込み症例は、身体の大きさから生じる植え込み場所やリード挿入方法の問題や植え込み後の患児の成長過程におけるペースメーカーの管理などいろいろな問題を含んでいる。そこで小児ペースメーカーの遠隔成績を成人例と比較することにより問題点を検討した。小児例では成人例に比べて、術後閾値上昇のためにlead交換をした症例や、創感染の症例を頻回に認めた。これは小児では心筋電極を使用してgeneratorを腹部に植え込んでいるためであり、可能なならば経静脈電極に変更すべきと思われた。
  • 野間 美緒, 佐藤 雅人, 阿部 正一, 軸屋 智昭, 厚美 直孝, 寺田 康, 榊原 謙, 三井 利夫
    1994 年23 巻1 号 p. 216-220
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1976~1992年の16年間に本院で植込まれたペースメーカー328個(新規および交換)のうち6症例(1.8%)に感染が発生した。このうち3例はジェネレーターおよび電極の完全除去(うち1例は体外循環下に遺残電極を除去した)を, 3例は電極の一部を体内に遺残する部分除去を行い,いずれもその後感染徴候を示さずに経過している。ペースメーカー感染症では, 異物であるジェネレーターと電極両方の完全除去が治療の原則である。しかし, self anchor機構のついた心内膜電極の普及により, 電極の完全除去は必ずしも容易ではなく, その除去にはかなり大きな侵襲を要することもある。我々は, まず異物の完全除去を試み, 電極の除去の困難な症例に対しては部分除去を行い, 部分除去で治癒し得ない場合にはさらに侵襲を加え, 完全除去を行っている。このように段階的に治療を進めることにより, より確実に, 安全に治療することを目指している。
  • 山田 眞, 成澤 隆, 饗場 正宏, 谷尾 昇, 田中 弘之, 舟波 誠, 井上 恒一, 高場 利博
    1994 年23 巻1 号 p. 221-223
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    1989年1月から1992年12月の4年間に当科に入院した9例のペースメーカー(以下, PM)感染症例(8例は他施設での植込み症例)に対し外科的治療を施行した。症例は男性4例, 女性5例で, 年齢は14歳から84歳平均59歳であった。施行した手技は以下のとうりである。I:PMシステムの全摘除および対側鎖骨下静脈から, あるいは心筋電極による新しいPMシステムの再植込み。II:鎖骨下静脈刺入部近くでリードを切断して皮下のリードおよびジェネレーターを除去。その後コネクターを用いて切断された末梢側リードと新しいリードとを接続し, これを皮下トンネルを通して新たに作製したPMポケット内で新ジェネレーターと接続。III:旧リードの再使用によるジェネレーターおよびPMポケットの変更。最長49か月の短期観察ではあるが感染の再燃は認められない。以上より, PM感染に対してはPMシステムの全摘除という原則にとらわれない対処も十分可能であると考えられた。
  • 酒井 裕紀, 仲田 昌司, 村田 眞司, 武内 俊史
    1994 年23 巻1 号 p. 224-227
    発行日: 1994/02/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    膜型人工肺の長期使用時には, 多孔質膜に血漿蛋白の付着および血漿成分の漏出に起因する人工肺のガス交換能の低下を生ずることは本邦でも報告されている。
    私達の施設においても同様なガス交換能低下を経験し, その原因であるWET LUNGを防止する目的で, ガスブレンダーおよびガス流量計の代わりにHFJV(High Freqency Jet Ventilator)を使用して, 基礎実験を行なった。定常流のコントロール群に比較して, 送気回数200~400回/minに酸素化の有意な上昇を認めた。その後, 臨床にも使用し長時間体外循環時(182時間)においても人工肺を交換することなくPaO2204.30±51.88mmHg, PaCO244.72±3.50mmHgと良好な血液ガス分圧を維持し得た。臨床使用は未だ1症例に過ぎないが, HFJVを使用する事により, 人工肺のWET LUNGによるガス交換能低下を防止できると考える。
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