抄録
腹膜透析における物質移動機構を雑種犬によるin vivoおよびex vivo実験で評価した。腹膜面積を50%以下に減少させるために、実験犬の内臓を外科的に切除した。しかし手術の前後で測定した腹膜の物質移動速度は、尿素およびクレアチニンともに不変であった。この現象を説明するために、物質移動が腹膜の総括物質移動・膜面積係数(MTAC)と腹膜血流量の両方に依存するとしたモデル(血流量-拡散融合型モデル)を考案した。内臓の一部を体外に取り出して、物質移動速度を測定したところ、小腸、脾臓、大網では比較的大きな物質移動能が確認された。また、腸間膜での物質移動は極めて小さいものと思われた。血流量-拡散融合型モデルを用いて、各内臓表面において物質移動に有効な血流量を推定したところ、単位膜面積当たり3.2x10-3-5.0x10-3ml/min/cm2腹膜となり、ヒト相当値(1.73m2当たり)は71mlとなった。