人工臓器
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23 巻, 2 号
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  • 浅沼 義博
    1994 年 23 巻 2 号 p. 365
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • 熊野 和雄, 酒井 糾, 山下 明泰
    1994 年 23 巻 2 号 p. 367-370
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    透析回路を振動させ間接的に腹腔内に振動を与える腹膜透析法(EPPD)を開発し、本法の水分、溶質の透析効率を検討した。イヌ4匹(平均体重13kg)を用いネンブタール麻酔下にテンコフカテーテルを挿入し以下の実験を行った。コントロールPDでは腹腔内に透析液(糖濃度2.3%)1L、EPPDでは腹腔内に1L、それと交通した透析バッグに1Lを満し、バッグを電気マッサージ器にて150または1440回/分振動させ、120分間の各透析における尿素、クレアチニン、ブドウ糖、イヌリンのダイアリザンスを測定した。EPPDにより溶質の除去能は平均23-95%、除水能は142%増加した。前者の増加は溶質の分子量が大きくなる程、顕著で、振動回数は多い方が効果が大きかった。このような溶質の除去効率の増大には腹膜血流の増大が、除水能ついてはリンパ吸収の減少が大きく関与していると思われた。
  • 山下 明泰, 熊野 和雄, 酒井 糾, 中西 光, J.w. MONCRIEF, R.p. POPOVICH
    1994 年 23 巻 2 号 p. 371-374
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    腹膜透析における物質移動機構を雑種犬によるin vivoおよびex vivo実験で評価した。腹膜面積を50%以下に減少させるために、実験犬の内臓を外科的に切除した。しかし手術の前後で測定した腹膜の物質移動速度は、尿素およびクレアチニンともに不変であった。この現象を説明するために、物質移動が腹膜の総括物質移動・膜面積係数(MTAC)と腹膜血流量の両方に依存するとしたモデル(血流量-拡散融合型モデル)を考案した。内臓の一部を体外に取り出して、物質移動速度を測定したところ、小腸、脾臓、大網では比較的大きな物質移動能が確認された。また、腸間膜での物質移動は極めて小さいものと思われた。血流量-拡散融合型モデルを用いて、各内臓表面において物質移動に有効な血流量を推定したところ、単位膜面積当たり3.2x10-3-5.0x10-3ml/min/cm2腹膜となり、ヒト相当値(1.73m2当たり)は71mlとなった。
  • 鈴木 正夫, 柴田 猛, 鈴木 好夫, 小椋 陽介, 森田 浩智
    1994 年 23 巻 2 号 p. 375-379
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    高齢者・合併症を有する症例の安定透析を図る為血液回路を縮小化し、材質・形状・安全性を考慮しCL-BS356回路を開発した。この回路は、メインチューブを3.0×6.0mmと内径のみを細くし、動脈チャンバー無しの構成で、外径は従来の物と同じ為、既存の装置でボリュームを縮小し、従来の二分の一から三分の一に落とす事に成功した。材質は、平均重合度約2500のエチレン・ビニールを使用する事でオートクレーブによる加熱変形を防ぐ事が出来た。安全面に於いては、採血・静注用混注口の位置を考慮し、穿刺部はリーク予防を考えてイソプレンを使用した。この回路により、18症例中72%の症例で血圧が以前より約20mmHg高い値で安定透析を行う事が出来た。しかも、オートクレーブによるチューブの張り付きなどのトラブルも見られず、エアー事故も一件も見られなかった。以上より、CL-BS356回路は安定性・安全性に於いて有用である。
  • ―多臓器不全症例での検討―
    重本 達弘, 嶋岡 英輝, 安宅 一晃, 佐谷 誠
    1994 年 23 巻 2 号 p. 380-384
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    持続血液浄化法施行症例では出血性素因をともなう場合が多く、出血性合併症に難渋してきたが、蛋白分解阻害剤の使用によりその頻度は減少した。最近では生体の凝固線溶系やサイトカインなどに与える影響を考慮したさらに至適な抗凝固が求められている。nafamostat mesilate (NM)を抗凝固剤として使用した15症例で抗凝固の至適性を検討した。持続血液浄化法施行前後で当院の基準により臓器不全スコアを算定し、同時にTAT、FPA、FDP-D-dimer、FPBβ15-42および血小板数を測定した。臓器不全スコアの変化により臓器不全増悪群、不変群、改善群の3群に分けて検討すると、増悪群では施行前よりTATが高値を示し、施行によりさらに上昇傾向を示した。改善群ではTATが低値であった。その他のマーカーは有意な変化を示さなかった。多臓器不全症例でTAT高値例では持続血液浄化法施行時に臓器不全が増悪する可能性があり、積極的に体外循環回路での凝固活性の亢進を抑制することが有用であることが示唆された。
  • 遠藤 幸男, 元木 良一, 井上 仁, 薄場 彰, 三浦 純一, 阿部 幹, 竹重 俊幸, 斎藤 拓朗
    1994 年 23 巻 2 号 p. 385-390
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    消化器外科手術後急性腎不全に陥った多臓器不全症例において, 持続的血液濾過法(CHF)と持続的血液濾過透析法(CHDF)を施行し, 呼吸循環動態を測定算出した救命例4例(S群)と死亡例6例(N群)を対象とした。CHF-CHDF施行前には, 両群では正常値と比較して左右室1回仕事量指数(LVSWI, RVSWI)の低値と平均肺動脈模入圧と平均右房圧の高値を示し, 左右心不全を示した。CHF/CHDF施行中には, N群ではS群と比較して心指数(CI), LVSWI, RVSWIが有意に低値を示したが(p<0.05, p<0.05, p<0.01), 心拍数が有意に高値を示し(p<0.05), 全末梢血管抵抗指数と肺小動脈血管抵抗指数が有意に高値を示し(p<0.05, p<0.05), 代償的血管収縮を示したので, 血圧は施行前と同様に保たれた。CHF/CHDF施行後には施行前と比較して, S群ではCIが有意に増加して(p<0.05), 循環動態が改善され, 両群ではrespiratory indexが改善され, CHF-CHDFは有効であった。
  • 丹羽 利充, 宮崎 高志, 前田 憲志
    1994 年 23 巻 2 号 p. 391-394
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    透析膜の生体適合性の指標としてのIL-8の意義を検討した。血液透析(HD)患者24例に, 再生セルロース(RC)膜(TFα-1300H), PAN膜(PAN-13DX), PMMA膜(BK-1.3P)を用いたHDを行い, 血漿IL-8濃度および末梢血単核球(PBMC)IL-8mRNAに対する影響を比較検討した。血漿IL-8濃度はRC, PMMAではHD後に有意に増加した。PBMCのIL-8mRNAはRC, PMMAでHD後に増加した。特に, RCにおけるIL-8mRNAの増加は著明であった。PANを用いたHD前後では血漿IL-8濃度は有意の変化を示さなかった。またPBMCのIL-8mRNAはPANのHD前後においては変化がみられなかった。透析膜の種類により, 血漿IL-8濃度, PBMCのIL-8産生に対する作用が異なることから, 好中球活性化など炎症惹起作用を有するIL-8は透析膜の生体適合性の指標になりうると考えられた。
  • ―AN-69, PAN-DX, polysulfoneの比較臨床試験―
    若狭 幹雄, 秋澤 忠男, 越川 昭三
    1994 年 23 巻 2 号 p. 395-399
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)と透析(HD)用膜素材のbradykinin (BK)産生に及ぼす影響を明らかにする目的で、3種のHD膜を用い、ACEI投与群、非投与群で透析中のBKの変化を比較検討した。
    ACEIを服用している定期HD患者6例及び非服用患者6例を対象に、AN-69(AN)、PAN-DX(DX)、polysulfone(PS)膜透析器を使用したHDを無作為な順序で3回ずつ施行し、最終回HD時にHD開始前、開始後5分、10分の透析器入口(A)及び出口(V)側血漿BK濃度を測定した。BKは、AN使用では開始後5分の、DXでは10分のV側で、各時点のA側に比し有意に上昇したが、PS使用下では、有意な変化は認めなかった。これらBKの変化にACEI服用の影響はみられなかった。これらの成績からACEI服用の有無にかかわらず、HD用膜素材が、BK産生に関与する可能性が示された。
  • 越川 昭三, 衣笠 えり子, 関口 高, 秋澤 忠男, 岸本 武利, 山上 征二, 吉村 力勇, 武本 佳昭
    1994 年 23 巻 2 号 p. 400-404
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    新開発のポリスルホン膜血液濾過器FS-104の臨床評価を行った。37例の透析期腎不全患者を対象に、体重の約30%を目標補充液量として計75回の血液濾過(HF)を後希釈法で施行した。BUN、Cr、UA、β2Mの平均除去率は42.5、45.6、57.3、73.5%で、濾過液中へのβ2M排泄量は180mgに達した。これらの溶質のふるい係数はHF中有意に変化せず、限外濾過圧は3時間まで有意に上昇したものの濾過速度は不変であった。治療中の白血球減少は、開始後15分でも前値の約80%と軽微な変化にとどまり、濾過器入口血漿C3a濃度には、治療中前値に比し有意の変化はみられなかった。C3a産生についても濾過器出口/入口比で約4.0にとどまった。また試験中、本濾過器に起因する副作用は認めなかった。以上より、FS-104は小分子量のみならず低分子タンパク領域の貯留物質についても高い除去を示し、優れた生体適合性を有する濾過器と考えられる。
  • 中西 裕治, 稲垣 王子, 中川 清彦, 平岡 敬介, 高光 義博
    1994 年 23 巻 2 号 p. 405-407
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    荷電性染料による透析膜荷電性の評価を試みた。透析膜はregenerated celrulose膜, di-acetate膜, triacetate膜, hemophan膜, polyethylene-glycol-graft-edcellulose膜, EVAL膜, PMMA膜, PAN(旭, HOSPAL)膜, PS膜, PERA膜, polyamide膜の13種類を使用した。荷電性染料は陽性荷電染料としてMethylene blueとCrystal violet, 陰性荷電染料としてOrange IIとAcid yellow 23, また対照として非荷電性染料の直接染料であるCongo redとDirect yellow 8を使用した。陰性荷電染料では染色性の差が少ないが, 陽性荷電染料では透析膜により2種の染料による染色性に差が認められた。これは荷電性染料が造塩結合だけでなく, 無機有機バランスの差, 結晶構造の差, 分子量の大きさの差などの要因により, 透析膜を染色するためと推測された。このように単一の染料による透析膜荷電性の評価には限界があり, 染料と透析膜の化学組成より総合的に判定する必要がある。
  • 田口 雅啓, 小久保 謙一, 酒井 清孝
    1994 年 23 巻 2 号 p. 408-411
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    臨床における透析膜の性能をタンパク質の吸着のない膜の評価とタンパク質の吸着特性から推算できれば透析器の設計に非常に役立つと考えられる。そこで、タンパク質の吸着による膜構造の変化と荷電状態の変化がイオンの透過性に与える影響を検討するために自作のミニモジュール(長さ10cm、中空糸本数200本)を用い、チトクロームCまたはα-ラクトアルブミンが平衡吸着した後のリン酸水素イオン(濃度3.33mEq/l、pH7.4)および非電解質である尿素(10mg/dl)の溶質透過係数の変化を透析実験によって測定した、実験は、37℃のもとで並流操作によって行った。その結果、リン酸水素イオンの溶質透過係数はチトクロームC吸着後には増加し、α-ラクトアルブミン吸着後には減少した。尿素の場合はどちらの場合も若干減少した。以上より、イオンの膜透過にはタンパク質の吸着による膜構造の変化だけでなく荷電状態の変化も影響することがわかった。
  • 坂下 恵一郎, 筒井 敏彦, 伊藤 晃, 山崎 親雄
    1994 年 23 巻 2 号 p. 412-416
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    高性能透析膜における低分子ヘパリン(LMWH)の吸着特性と透過性について検討した。生食系実験では, LMWH吸着を認めたものはBLXのみであり, LMWHのSCは, CL-SS:0.39, KF-C:0.53, AM-GP:0.56, BK-P:0.79, PS:0.87, FLX:1.03で, BLXはゼロであった。血液回路をシャントから切り放し, 動静脈先端を接続し再循環・濾過を各3例実施した臨床試験で, 濾液にLMWHが検出されたのはBK。PとFLXの各2例のみで, そのSCはBK-P:0,064, FLX:0.017であった。またLMWH減少率は, BLX=71.9%, AM-GP:21.4%, BK-P:19,9%, KF-C:13.7%といずれも有意な減少を示したが、FLXは3.3%で有意差はなかった。以上の結果より, 透析開始時のLMWH投与においては,LMWHが透析されないよう, 脱血前に全身ヘパリン化を行うか静脈回路からの投与を行うことが必要であり, またLMWHを強く吸着するBLXでは投与量の増量が必要であるが, 他の高性能透析膜では従来膜と同量でよいと思われた。
  • 石井 亜佐了, 小久 保謙, 酒井 清孝, 三浦 明, 鈴木 利昭
    1994 年 23 巻 2 号 p. 417-422
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    透析排液中の溶質濃度から血中溶質濃度が推算できれば、透析のたびに患者個人個人の詳細なデータを得ることができる。そこで、8名の安定期透析患者を対象に血中および透析排液中の尿素、リン酸イオン、クレアチニン、尿酸の濃度を測定し、血中溶質濃度の推算精度について検討した。あらかじめ定めた見かけの体液量を用いると、尿酸など1-poolモデルに従わない溶質でも、見かけ上1-poolモデルで精度よく推算できた。リン酸イオン以外の溶質については、1、2ヶ月の間見かけの体液量に変化がなかったことから、見かけの体液量を用いて血中溶質濃度を正しく推算できると考えられた。また、見かけの体液量は溶質ごとに特徴があり、尿酸はどの患者についても少なく、リン酸イオンは人により大きく異なった。
  • 蓮尾 健直, 金森 敏幸, 酒井 清孝
    1994 年 23 巻 2 号 p. 423-428
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    高効率の透析器の設計には、膜を介した溶質移動現象の解明が必要であるが透析器内の流動状態は複雑で、その解明は困難である。溶質移動速度を決定する全抵抗は、膜抵抗、血液側及び透析液側境膜抵抗の和である。そのうち透析液側境膜抵抗は、膜抵抗と共に全抵抗に占める割合が大きい。そこで本研究では、膜同士の接触を抑え、有効膜面積を増加させ、透析液側流動状態を改善する効果が期待される、膜面上にフィンの付いた透析膜について、膜を介した溶質移動現象を検討した。1本の中空糸透析膜での透析実験から膜面上のフィンは溶質移動に影響を及ぼさないことがわかった。またフィン付き中空糸透析膜を用いた市販透析器での透析実験から、フィンは膜同士の接触を抑え、有効膜面積を増加させる効果があることが示唆された。またX線CTを利用した透析器内の透析液側流動状態の観察結果から、フィンはチャンネリングを抑える効果があることが示唆された。
  • 高木 信嘉, 平和 伸仁, 常田 康夫, 竹田 和義, 田村 功一, 岩本 彩雄, 山口 聡, 石井 當男
    1994 年 23 巻 2 号 p. 429-434
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    血液透析回路内における血液透析膜の生体適合性と抗凝固薬の影響とを検討する目的で、血小板内Ca2+とそのトロンビン刺激による上昇を、慢性腎不全血液透析患者32例(男19例、女13例;年齢平均58.8±2.5(SE)歳)で測定し、以下の結果を得た。1)半合成膜による血液透析時に透析器直後の血小板内Ca2+は透析器直前と比べ有意の上昇を示したが、合成膜では変化しなかった。限外濾過時は、両者とも血小板内Ca2+は変化しなかった。2)0.1U/mlのトロンビン刺激による血小板内Ca2+上昇は、半合成膜通過後に有意に増加し、血小板内へのCa2+influxの増加を認めた。3)抗凝固薬注入直後の血小板内Ca2+は有意の低下を示した。4)トロンビン刺激による血小板内Ca2+上昇は、抗凝固薬注入後有意に減少し、mobilizationとinfluxとも減少した。以上より、半合成膜透析器は血小板内Ca2+を上昇させ、生体適合性が良くないと示唆され、また抗凝固薬は血小板内Ca2+を低下させ、トロンビン刺激による血小板内Ca2+を抑制し、回路内で血小板機能を抑制していると考えられた。
  • 久木田 和丘, 目黒 順一, 米川 元樹, 柳田 尚之, 倉内 宣明, 高橋 昌宏, 池田 篤, 川村 明夫
    1994 年 23 巻 2 号 p. 435-438
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    血液透析およびcryofiltrationによるシスプラチン(CDDP)の除去能を、進行肺癌を併発した血液透析症例において検討した。ダイアライザーはGFS-PLUS-15、プラズマセパレーターはAP-05H、cryofilterはAP-06を用いた。CDDP10mg及び20mg静注後の血中濃度は、投与後4時間までに急速に低下したが、静注後より血液透析を施行すると投与後1時間目までにさらに急速な低下を示した。静注後24時間目からの5時間透析では、ほとんど血中濃度の低下は認められなかったが、血漿4Lのcryofiltrationを施行すると前値の73.9%まで低下した。CDDPは静注直後では、血液透析でも血中の濃度低下をはかれるが、蛋白結合型が多くなる4時間目以降では血液透析による血中濃度低下は期待できず、cryofiltrationが有効と考えられた。
  • 古吉 重雄, 南光 聡毅, 高田 覚, 谷 敍孝
    1994 年 23 巻 2 号 p. 439-444
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    新たに開発した直接血液灌流型β2-ミクログロブリン(β2M)吸着体並びに吸着器(BM-01)の吸着性能を評価した。in vitroでの吸着試験においては、β2M吸着量は血清β2M濃度に比例して増加し、吸着容量は吸着体1mlあたり1mg以上と評価された。また、β2M以外にリゾチームやレチノール結合性タンパクなどの小分子量蛋白の吸着が認められた。一方、BM-01を透析器と直列に接続して行った臨床使用では、β2M除去1率は約70%、使用後値はほぼ10mg/l以下であった。吸着量は218.3±56.7mg/カラム(β2M前値:30~50mg/l)であり、最高吸着量は371.9mg/カラム(β2M前値:47.6mg/l)と算定された。また、in vitro試験と同様に小分子量蛋白の低下が認められた。BM-01は透析患者血中より簡便にβ2Mを除去する有用なデバイスと考えられた。
  • 杉山 元信, 山路 健, 金井 美紀, 津田 裕士
    1994 年 23 巻 2 号 p. 445-448
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    慢性関節リウマチ(以下RA)患者に対する血漿交換療法(以下PP)の有用性や血液及び血漿粘度がRA患者に対するPP効果の指標として有用であることは検討されてきた。今回我々は有効な血漿処理量を求める為に、PPの血漿処理量による血液及び血漿粘度の経時的変化を比較検討した。対象は、RA患者10例で、PP前、血漿処理10ml/kg時、20ml/kg時、30ml/kg時、40ml/kg時において血液及び血漿粘度を測定した。PPは二重濾過法をおこなった。血漿粘度10例の平均は、PPに際して、低下を示した。血液粘度に関してはヘマトクリット値の影響の為か有意なデータは得られなかった。今回の検討で、処理量が増加することにより、血漿粘度は低下するが、30ml/kg処理以後、粘度の低下傾向が鈍化する傾向を認めた。今後症例を増やすと共に、臨床症状と比較検討し、血漿粘度によるPPの処理量の指標を検討していきたい。
  • 竹沢 真吾, 日台 英雄, 菅野 正彦, 土谷 正和
    1994 年 23 巻 2 号 p. 449-452
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    採取後より経時的に変化する透析液中のエンドトキシン分析値を安定化させるため、安定化剤を検討した. その結果、ヒトアルブミン水溶液0.02%を50μlファルコン管へあらかじめ入れ、そこへ透析液を約2ml採取するとよいことがわかった. 透析中のエンドトキシンは透析開始後60分ほどで一定となる傾向にあり、施設本来の分析値を得るためには透析終了直後に透析液を採取するとよい. 複数施設の透析液分析結果より、ラインの自動洗浄、原液タンクのマニュアル洗浄を行っても値が下がらない場合は、ROタンクの洗浄などを行わない限り低減は困難と思われる.
  • ―温阻血時間よりみたヒト肝細胞の単離・培養に関する検討―
    松下 通明, 高橋 学, 今 裕史, 蒲池 浩文, 田口 宏一, 西川 眞, 小池 雅彦, 能登 啓光, 佐藤 和広, 松江 弘一, 佐藤 ...
    1994 年 23 巻 2 号 p. 453-458
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ハイブリッド型人工肝のバイオリアクターへの応用を目指し、外科的に切除した摘出肝の非病変部よりヒト肝細胞の分離ならびに培養肝細胞機能に与える影響を、術前に承諾を得た患者13例を対象に検討した。肝温阻血時間は0-180分であった。単離肝細胞のviability、細胞収量は夫々88.6±5.7%、10.9±6.6×106個/g肝であり、温阻血時間との間に相関を認めなかった。培養ヒト肝細胞の糖新生能、尿素合成能は、夫々26,2-45.5、2.7-3.8ng/μgDNA/minと高レベルに維持され、肝温阻血時間との間に統計的相関をみなかった。以上より、温阻血時間が180分までの肝組織からは、viability、細胞収量ともに高いヒト肝細胞の単離が可能であり、また、180分までの温阻血肝から単離された培養ヒト肝細胞は、高機能を10日間維持した。ハイブリッド型人工肝のバイオリアクターとして培養ヒト肝細胞は期待される結果であった。
  • ―ラット肝細胞コラーゲンゲル内培養法を用いて―
    鈴木 雅之, 石橋 治昭, 竹下 和良, 山本 拓実, 小玉 正智
    1994 年 23 巻 2 号 p. 459-462
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ハイブリッド型人工肝臓の実現には、肝細胞の保存技術の確立が望まれる。人工肝モジュールの保存法の検討のためコラーゲンゲル内培養肝細胞の保存実験を行った。肝細胞はラットより採取し、UW液4℃8日間保存したのち、機能評価のため2週間培養を行った。形態学的には培養14日まで球状形態を示しておりviableな状態であると考えられた。尿素合成能は培養2日33.5±3.0μg/ml、6日29.6±6.4μg/mlであり、保存をしていないコントロール群と比較すると95.1%、75.2%となり、機能を良好に維持していた。UW液4℃8日間の保存は可能であった。
  • 井嶋 博之, 松下 琢, 船津 和守
    1994 年 23 巻 2 号 p. 463-468
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • ―血漿中での肝機能の維持―
    松下 琢, 井嶋 博之, 船津 和守, 浜崎 啓介, 小出 典男
    1994 年 23 巻 2 号 p. 469-472
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    成熟ラット肝細胞は、無血清培地中での5日間の培養で、ポリウレタンフオーム(PUF)孔内でスフェロイドを形成するが、その後100%ラット血漿中に移し培養を続けると、16日目でその内部構造が崩壊した。しかし、血漿中にepidermal growth factor (EGF, 50μg/l)、インスリン(10mg/l)、グルカゴン(10-8M)、デキサメサゾン(10-8M)、アプロチニン(100KIU/ml)を添加することにより、この崩壊は抑制され、スフェロイドの構造は培養20日間にわたる静置培養で維持された。またスフェロイドの尿素合成活性も培養20日間にわたって良好に維持された。さらに多細管型PUF充填層培養においても、ホルモン添加血漿中で尿素合成活性が維持され、その値は無血清培地中よりも高かった。
  • 酒井 康行, 鈴木 基之
    1994 年 23 巻 2 号 p. 473-478
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    ホローファイバーモジュールのキャピラリー外容積に, 浮遊培養によって迅速形成させた肝細胞スフェロイドを1.0×107cells/cm3程度の細胞密度でコラーゲンゲルと共に固定化するタイプのハイブリッド型人工肝臓モジュールを製作した. 牛胎児血清と高濃度ホルモンを添加した合成培地や, 100%の成牛血清で10日間にわたり灌流培養を行い, アルブミン分泌能・アンモニア除去能・尿素合成能の発現などを測定した. その結果, 合成培地中では, 既往のモジュールよりも著しく良好な発現は見られなかったが, 全体としてほぼ同程度の発現を示した. また, 100%血清中でも, アルブミン分泌能以外の機能は, 合成培地中とほぼ同程度の発現を示した. よって, 本モジュールタイプは, 実際の臨床応用での機能発現において安定性が高いことが示唆された.
  • 三好 浩稔, 柳 健一, 大川 敬子, 大島 宣雄
    1994 年 23 巻 2 号 p. 479-484
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
  • ―生体適合性の検討―
    西田 健朗, 榊田 典治, 一ノ瀬 賢司, 橋口 恭博, 上原 昌哉, 上村 毅郎, 梶原 研一郎, 七里 元亮, 石原 一彦, 中林 宣男
    1994 年 23 巻 2 号 p. 485-489
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    我々は既に生体膜類似構造を有するリン脂質からなる2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine(以下MPC)膜で微小針型ブドウ糖センサを被覆することにより、その機能の安定性、信頼性を長期間維持できることを報告した。今回はさらに、Mpc膜の血小板凝集及び蛋白付着の抑制効果にっきin vitro、in vivoにおいてpolyvinyl alcohol(以下PVA)膜と比較検討した。(1)血小板最大凝集率の対照との差が、PVA、MPC膜それぞれにおいて42、24%であった。(2)In vitroにおける吸着蛋白量は、14日目でPVA、MPC膜それぞれ35.6、14.0μg/cm2であった。(3)In vivoにおける吸着蛋白量は、14日目で、PVA、MPC膜それぞれ31.2、16,9μg/cm2であった。以上、MPC膜は、PVA膜と比較して、血小板凝集及び蛋白吸着を有意に抑制した。これらの成績はMPC膜の生体適合性に優れた膜特性を示し、MPC膜被覆フェロセン付加微小針型ブドウ糖センサが、長期間機能の安定性信頼性を維持する事を可能とした。
  • ―血糖変動への追随性について―
    橋口 恭博, 榊田 典治, 一ノ瀬 賢司, 西田 健朗, 上原 昌哉, 上村 毅郎, 梶原 研一郎, 七里 元亮
    1994 年 23 巻 2 号 p. 490-494
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    マイクロダイアリシスサンプリング法を応用した本システムの血糖変動への追随性を詳細に検討した。i)in vitro 系;90%応答時間はメディウム中ブドウ糖濃度上昇時5.6±0.4分、下降時7.4±0.5分であった。ii)in vitro 系;皮下組織ブドウ糖濃度(Y)は血糖値(X)に比し、血糖上昇時6.9±1.2分、下降時8.8±1.6分の遅れにて追随し、両者の相関はY=1.08X+3.42(r=0.99)であった。長期応用時、一点較正なく計測した場合、5日目以降の回帰直線は開始日より4日目までのものに比し有意に傾きが小となるも、5日目以降一点較正を行うか、5日目にプローブ交換し計測した場合、5日目以降のものは開始日より4日目までのものにほぼ一致した。以上より、本システムは血糖変動への追随性について優れた特性を有し、組織ブドウ糖濃度の計測法として極めて有用であり、臨床応用にさらに近づいたといえる.
  • 星野 正巳, 原口 義座, 酒井 基広, 石原 哲
    1994 年 23 巻 2 号 p. 495-500
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    日機装社製人工膵施行117症例を, STG-11A(A群:102例), アラーム変更前のSTG-22前期(B群: 7例), 変更後のSTG-22後期(C群:7例)に分け, アーチファクトによるアラームの原因を検討した. 末梢静脈用18G, 16G, 中心静脈用20cm採血カテーテルでの1日平均アラーム数は, 各々約20, 10, 5回で, 末梢では採血不良による低血糖アラームが頻回であった. 大腿静脈内カテーテル留置, 鎖骨下静脈留置, 自発呼吸例, 人工呼吸例では, 各々約6, 4, 8, 3回と,大腿静脈留置や自発呼吸例で体動等が原因の血糖アラームが増加した. A, B, C, 群の比較では, 各々約5 24, 9回で, 血糖変化率アラームがB群で多く, カテーテルのフラッショ頻度減少, 鋭敏すぎる血糖変化率アラーム基準が原因と考えられた. 更に, 脱水, 凝固能亢進例では, 容易に採血ラインの閉塞, 血栓形成を生じてアラームが増加すると思われた. 【結論】カテーテルの種類, 留置部位, カテーテルフラッシュ, 血糖変化率アラーム基準, 患者の呼吸状態, 凝固能は, アラーム頻度と密接に関連すると考えられた.
  • 荻野 英司, 谷 敍孝
    1994 年 23 巻 2 号 p. 501-505
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    リンパ球の表面抗原であるCD3に対する抗体と共に培養するとリンパ球は活性化され、癌細胞に対するCytotoxity(キラー活性)が上昇する。このことを踏まえ、体外循環によりキラー活性の誘導、免疫賦活システムの開発を目的に短時間でキラー活性を誘導するキラー活性誘導材の検討を行った。既に免疫抑制剤として臨床に用いられている抗CD3抗体(OKT3)、あるいはその部分タンパク質を担体に共有結合で固定化するとヒト末梢血より分離したリンパ球のキラー活性を高められることを見いだした。更にこのキラー活性誘導材は末梢血をそのまま接触させてもリンパ球のキラー活性を誘導することが可能であり、抗体由来のリガンドであるがリンパ球を吸着することのない処理条件でキラー活性を誘導することが可能であった。in vitroの結果ではあるが、癌治療の集学的治療の1療法としての可能性が示唆された。
  • ―吸着法と遠心分離法との比較―
    河西 利昭, 津田 裕士
    1994 年 23 巻 2 号 p. 506-510
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    薬剤抵抗性などの難治性の慢性関節リウマチ(Rheumatoid Arthritis, RA)に体外循環法としてリンパ球除去療法(Lymohocyt-apheresis, LCP) が臨床応用され, その有効性が報告されている。今回ポリエステル繊維からなる白血球除去フィルターによるLCP(吸着法)と, 遠心分離法によるLCPを同一RA患者に前後して施行し, それぞれの免疫能への影響, 臨床効果について比較検討した。吸着法においても遠心分離法と同等のリンパ球除去能を有することが確認できた。さらに臨床症状, 炎症反応の改善と共にCD4/CD8比の減少, およびHLA-DP陽性細胞比の減少を認めるなど, 吸着法によるLCPの有効性が認められた。白血球除去フィルターによるLCPはRAに対して, 遠心分離法によるLCPと比較して同等以上の有効性がある治療法と考えられた。
  • 坂下 栄治, 小林 直之, 宮下 警一, 日野 和夫, 楳本 良一, 米川 元樹, 川村 明夫, 平野 尚伸, 関口 清俊, 駒井 喬, 松 ...
    1994 年 23 巻 2 号 p. 511-517
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    Cryofiltration(CF)で生成するCryogel(CG)の主成分は、Heparin存在下に冷却沈降するFibrinogen(Fbg)とFibronectin(FN)の複合体(Cryofibdnogen: C-Fbg)であり、EDA(+)FNが血漿FN(pFN)より選択的に取り込まれる。我々はこの選択性の機序を明らかにするため、固定化したFbg、Hepadnへの両FNの結合率(BR)を4~37℃の範囲で測定した。pFNは低温でのみ両物質への高いBRを示した。これと比較してEDA(+)FNは、FbgへのBRはやや高い程度であったが、HepatinへのBRは高温でも高い点で著しい差を認めた。In vitroの冷却沈降(CP)実験で、EDA(+)FNはpFNより速やかで高いCP性を示した。EDA(+)FNを除去した血漿でFbgは、Heparin添加でゲル化せず、更にEDA(+)FNの添加でゲル化した。以上、EDA(+)FNはCFによるC-Fbg生成に必須であり、それはEDA(+)FNの高いCP性と全温度領域でのHeparin親和性によりFbg-FN-Heparin Complexが短時間に生成、沈降するためと考えられた。
  • ―特に採取濃厚血小板中残存微量白血球のフローサイトメトリー法による測定から―
    面川 進, 能登谷 武, 三浦 亮
    1994 年 23 巻 2 号 p. 518-522
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    COBE SpectraとHAEMONETICS V-50を用い濃厚血小板(PC)採取を行い、両装置の比較検討を行った。白血球混入に関してはフローサイトメトリー(FCM)を用い残存微量白血球数測定を行った。血小板収量はSpectraとV-50に差はないがアフェレーシス時間はV-50の105.7minに比しSpectraで73.5minと有意に短かった。PC採取前後での血液学的検査、生化学的検査で両群に差はなく、C3a, C5aも両群とも有意な増加はなかった。白血球混入は、従来法でV-50は683.3/μlとSpectraでの測定限界以下に比し有意に高かった。FCMにより白血球数はin vitroでく50/μlまで検出測定可能であった。Spectraで採取されたPC中の残存白血球数はFCMによる測定で1.04×105/productと極めて少なかった。Spectraにより有効にPCが採取可能であり、白血球の混入も少なかった。FCM法はPC製剤など血液製剤中の残存微量白血球検出に有用である。
  • 氷見 直之, 吉見 靖男, 酒井 清孝
    1994 年 23 巻 2 号 p. 523-526
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    手術後の感染症などによる血中抗体量変化のモニタリングを目的とした、抗体連続定量法を開発した。現在の抗体定量法は、煩雑な操作を伴うため、連続化は困難である。そこで我々はルミノールの電気化学反応により生ずる発光(電気化学発光)と抗原抗体反応を利用した連続定量が可能なセンサーを開発した。測定は、導電性ガラスを電極としたフローセルを用いた。
    予めルミノールを標識したヒト血清アルブミン(HSA)溶液に、0.0~2.2mg/mlの濃度の抗HSA抗体を加え、発光強度から抗体量を推算した。発光強度は抗体濃度の増加に伴い直線的に上昇した。これは発光反応を陰極で行う場合にのみ確認される特別な傾向である。
    本法により、体液中から、特定の抗原に対して特異的に反応する抗体のみを定量できると考えた。
  • 添田 耕司, 堀 潤朗, 小高 通夫, 伊藤 靖, 磯野 可一
    1994 年 23 巻 2 号 p. 527-532
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    薬物治療抵抗性の天疱瘡7例および類天疱瘡4例に対し、血漿二重濾過法(DFPP)および免疫学的血漿吸着法(IAPP)を施行した。
    われわれは、これらの症例について合併症、血液浄化法の適応、治療効果およびIgGや自己抗体の除去率について検討した。合併症として糖尿病、骨粗鬆症、感染症が認められた。DFPPではIgGの除去率は38%で、天疱瘡抗体価が半減した。DFPPにより皮疹の消失、自己抗体の消失およびステロイド投与量の減少が認められ、長期観察例においても有効性が認められた。IAPPではIgGの除去率は30%前後で類天疱瘡の1例では抗体価が半減し有効であったが、天疱瘡の2例では有効でなかった。
    DFPP中止にて新生疹が出現するため、DFPPが長期間施行されている血液浄化法依存性天疱瘡の1例を認めた。薬物治療抵抗性の天疱瘡、類天疱瘡に対し血液浄化法は有効で自己抗体価の高い症例にも適応があると思われた。
  • 松澤 史, 佐中 孜, 安藤 稔, 仲里 聰, 久保 和雄, 金子 岩和, 二瓶 宏, 阿岸 鉄三
    1994 年 23 巻 2 号 p. 533-536
    発行日: 1994/04/15
    公開日: 2011/10/07
    ジャーナル フリー
    最近LDL吸着療法中にショック症状が出現する事が報告されている。原因として血中ブラジキニン(BK)濃度の上昇が指摘されている。我々は、LDL吸着療法施行中の46名の患者のうち、3名の患者について(1名はアンジオテンシン変換酵素阻害剤=ACEI服用者)抗凝固剤としてナファモスタットメシレート(NM)0.5mg/kg/hrまたはヘパリン800単位/hrを便用し、各々の臨床症状ならびに血中BK濃度の変化を比較した。ヘパリン使用時には血漿処理量300mlの時点で血中BK値は平均で64.2pg/mlより1558.5pg/ml、最大3000pg/mlまで約24倍の上昇を認めた。こめうちACEI服用著では顔面紅潮、悪心、嘔吐、胸部絞扼感、下痢などのアナフィラキシーショック様の血圧低下を来したため加療を中止した。ヘパリンをNMに変更したところ、全例で臨床症状上の変化やBK濃度の上昇は見られず、著変なく加療できた。NMの注入量を0.5、0.3、0.2mg/kg/hrと減少きせたが、症状上の変化はなく、凝血が生じることもなかった。吸着療法後ではAPTT、PTの明らかな延長、フィブリノーゲンの減少を認めることより通常の血液透析時に必要とするNM濃度より低濾度で加療できるのはこれらの因子も与すると思われる。以上よりLDL吸着療法においてNMを使用することはACEI服用者においてもBKの活性化を軽減し、ショック症状の発現の回避に有用であると思われる。
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