1994 年 23 巻 2 号 p. 423-428
高効率の透析器の設計には、膜を介した溶質移動現象の解明が必要であるが透析器内の流動状態は複雑で、その解明は困難である。溶質移動速度を決定する全抵抗は、膜抵抗、血液側及び透析液側境膜抵抗の和である。そのうち透析液側境膜抵抗は、膜抵抗と共に全抵抗に占める割合が大きい。そこで本研究では、膜同士の接触を抑え、有効膜面積を増加させ、透析液側流動状態を改善する効果が期待される、膜面上にフィンの付いた透析膜について、膜を介した溶質移動現象を検討した。1本の中空糸透析膜での透析実験から膜面上のフィンは溶質移動に影響を及ぼさないことがわかった。またフィン付き中空糸透析膜を用いた市販透析器での透析実験から、フィンは膜同士の接触を抑え、有効膜面積を増加させる効果があることが示唆された。またX線CTを利用した透析器内の透析液側流動状態の観察結果から、フィンはチャンネリングを抑える効果があることが示唆された。