抄録
D-ガラクトサミンで誘発した肝不全ラット(正常PT値;19~20秒に対し、27~43秒まで上昇)5例に対して、頸動静脈を用いた3時間の体外循環によって多細管型PUF/スフェロイド充填層人工肝臓(PUF体積;4.4cm3, 細胞密度;1.14×107cells/cm3-PUF)を適用したところ、5例中4例は血中アンモニア濃度の上昇が肝性昏睡発症領域(196N-μg/dl)以下に抑えられ約40時間で正常値まで戻った。また上昇した他のPT値・GPT・GOT・総ビリルビン・総胆汁酸濃度も4日以内に正常値まで回復し、4例とも生存した。一方対照として、同様な実験を肝細胞を含まない人工肝臓を用いて行った(3例)ところ、全例とも体外循環中及びその直後に血中アンモニア濃度が急激に上昇して死亡した。以上の結果から、人工肝臓内のスフェロイドは血中アンモニアの解毒代謝を良好に行い、肝不全からの回復に対し何らかの重要な役割を果たしたことが示唆された。