抄録
小口径人工血管の基質(matrix)としての応用を目的とし, fibrin作製に関わる各種パラメーターを変化させ, 抗血栓性および組織治癒性をin vitroおよびfibrin被覆人工血管の動物移植実験により検討した. fibrinは作製条件によりmonomerあるいはpolymerを形成し, 人工血管の家兎腹部大動脈移植実験によりpolymerで細胞誘導性が良好であった. またfibrin作製時のイオン強度の違いにより重合度, 耐線溶性, 培養血管内皮細胞および平滑筋細胞の増殖性に差が認められ, イオン強度0.20が好適であった. さらにthrombinとfibrinogenの反応比(T/F比:U/mg)の違いでも同様に耐線溶性などに差が見られ, fibrin被覆人工血管のイヌ頚動脈移植実験の結果とあわせ, T/F比は0.180が好適であった. 以上よりfibrinの作製条件を変えることで抗血栓性および細胞増殖性が異なることを確認し, 適切な作製条件の設定を行うことで, 小口径人工血管のより好適な基質としての応用が可能となった.