1996 年 25 巻 1 号 p. 102-106
浄水化技術の進展に伴い未滅菌の透析液を置換液として使用する大量液置換HF, HDFが注目され、一部臨床応用されるに至っている。しかし、これら大量濾過を可能とする専用濾過器はいまだ現存せず、高性能ダイアライザが流用されているのが現状である。このような背景から、本研究では専用濾過器の至適設計に必要な、大量濾過時の溶質分離特性の解明、特にみかけのふるい係数(SC)の流量依存性(血液側流量QBならびに濾液側流量QF)を明らかにすることを目的とした。myoglobinを用いた水溶液系濾過実験の結果、以下の結論が得られた。(1) QF一定下でQBを増大させると、血液側線流速の増加による濃度分極層厚みの減少によりSCの値は低下した。(2) QB一定下でQFを増大させると、低濾過分率(FF)領域では、濃度分極の発達による溶質の逆拡散流束増大によりSCの値は低下したのに対し、高EF領域では血液流れ方向の溶質の濃縮効果により、SCの値は増加に転じた。