抄録
フィブロネクチン(FN)固定化、FNを共有結合する前段階のメタクリル酸(MA)固定化、および未処理のexpanded polytetrafluoroethyiene(ePTFE)人工血管(内径2mm、繊維長30μm)をウサギ頸動脈に置換し、初期血栓形成性、開存牲ならびに器質化状態を調べた。MAおよびMA/FN固定化人工血管では未処理と異なり、1日後からフィブリンを主体とする平滑で薄い血栓膜が形成された。これらの12週までの開存率は未処理と同程度であり、4週後の内皮被覆率は未処理の3~6倍と大きく、仮性内膜も厚くなっていた。12週後では、MA固定化人工血管の内皮形成促進効果が認められなくなったのに対して、MA/FN固定ではさらに内皮被覆が進行しており、前者に比べて仮性内膜もより肥厚していた。以上から、MA/FN固定化ePTFE人工血管において見られた内皮形成促進には、平滑なフィブリン血栓の早期形成に加えて、その後の仮性内膜形成が密接に関連していることを示唆した。