1996 年 25 巻 2 号 p. 266-270
体循環を無拍動流化した場合の急性期の生体反応を、液性循環調節因子の変動の面から検討した。成山羊22頭を用い、全身麻酔下に左房左室脱血、下行大動脈送血の左心バイパス回路を装着し、拍動流および無拍動流ポンプを並列に接続した。100%左心バイパス下に拍動流から無拍動流へと瞬時に移行し、その前後での血行動態および液性調節因子の変化を観察した。無拍動流化後全身灌流量と末梢血管抵抗は変化しなかったが、平均大動脈圧は有意に上昇し(99.2±3.3 vs 106.0±2.9mmHg)、液性調節因子ではノルアドレナリンのみが有意に増加した(299.6±38.9 vs 372.9±52.9pg/ml)。また、平均大動脈圧とノルアドレナリンの変化値の間には有意な負の相関(r=0.53、p<0.05)が観察された。これらの結果は、無拍動流化後急性期に交感神経系の一時的な緊張によって血中ノルアドレナリン値が増加し、同時に圧受容体反射の関与した循環調節が機能している可能性を示唆していると考えられた。