抄録
長期体外循環を志向した新しい模型人工肺, クラレ社製AL-4000を用いて経時的pH変化に伴う変形赤血球の膜付着と圧力損失について実験的検討を行った。800mlの牛血, 7%NaHCO3 80ml, ヘパリン1600IUおよび乳酸リンゲル液で総プライミング量を2000mlとし, V/Q比0.5, FiO2 0.8でガスの吹送を行った。実験開始時の平均pHは7.60±0.10で, 急激にpHの上昇を認め10分にはすでに8.13±0.12, 30分で8.47±0.15, 60分で8.67±0.06に達し, 90分では8.77±0.06となった。一方圧損(cm血柱)は開始時0, 30分で0.13±0.06, 60分でも0.47±0.29, 90分で1.10±0.26と極わずかの上昇に留まった。還流終了後膜表面の走査電子顕微鏡でも血液成分の付着は軽度であった。原因として中空糸素材である特殊ポリオレフィンの血液接触面が滑らか且つ空気との接触がなく, 隣合う中空糸の間隔が一定で血液流線に対し直交配列である, など構造上に起因したことが主で, 安全性の高い膜型人工肺と考えられた。