抄録
体外循環下開心術おける可溶性接着分子(sELAM-1、sICAM-1、sVCAM-1)の変動を把握し、FUT-175の効果を検討した。成人開心術症例20例を対象とし、FUT-175投与(2mg/kg/hr)群(Group A)(n=10)と非投与群(Group B)(n=10)とに分けた。いずれの可溶性接着分子も体外循環中は術前値に比べ減少し、体外循環終了に伴い増加した。特にsELAM-1、sICAM-1はそれぞれ体外循環終了後5分、24時間で最高値に達し、投与群は非投与群に比べ有意に低値(sELAM-1:32.1±11.5vs. 38.6±8.9ng/ml、p<0.05、sICAM-1:327±94vs. 483±106ng/ml、p<0.05)であった。sVCAM-1は体外循環終了後有意な変動を示さなかったが、投与群は非投与群に比べ有意に低値であった。また、投与群では非投与群と比べて術後の合併症が有意に抑制された。以上より、FUT-175は可溶性接着分子を有意に抑制し、臨床的に臓器障害の予防に有効であることが示唆された。