抄録
ヘパリンコーティング(HC)人工心肺回路の使用により体外循環(CPB)に伴う凝固線溶反応が抑制されるか否かにっき検討した。対象は成人開心術30症例で、HC回路を用いたHC群と、非HC回路を用いたNHC群に分けた。CPBは両群とも活性化凝固時間を400秒以上に維持して行い、術前からCPB終了後24時間までの11時点でthrombin-antithrombin III (TAT)、fibrinopeptide A (FPA)、antithrombin III (AT-III)、α2 plasmin inhibitor-plasmin complex (PIC)、D-dimer (DD)を測定した。TATとFPAは両群とも著明に上昇したが、CPB中はHC群の方が低値をとる傾向にあり、特にHC群ではNHC群でみられたFPAの有意な上昇を認めなかった。PICとDDは両群でCPB中から上昇したが、CPB中・後を通じてHC群の方が有意に低値であった。以上よりCPBに伴い凝固線溶反応は充進するが、HC回路の使用によりこれらは抑制され、開心術におけるHC回路の使用は有用であると考えられた。