抄録
生体血管類似の階層型ハイブリッド人工血管を開発し、生体内における組織化を細胞の動的挙動および細胞外マトリックスの再構築過程から検討した。線維芽細胞層、平滑筋細胞層、内皮細胞層の三層構造をin vitroでダクロン製入工血管(内径4mm、長さ6cm)上に逐次的に階層構築した。作製したグラフトを細胞を採取した同一犬(17頭)の総頚動脈に移植した(2~23週間)。17本中開存していた15本のグラフトはすべて内腔面は内皮細胞で完全被覆されていた。移植後12週で、細胞レベルおよび細胞分子レベルでほぼ生体血管同様の立体再構築を認めた。移植後23週では、吻合部肥厚も認めず、より高度に緻密化した血管壁構造を認めた。3種類の血管壁細胞を用いた階層型ハイブリッド人工血管は過度の内膜肥厚を起こすことなく血管壁再構築を大幅に促進すると考えられる。