1998 年 27 巻 1 号 p. 244-249
細胞培養媒体として有用なコラーゲンゲルの微細構造を変化させることにより、物質の拡散透過性の制御を試みた。豚皮由来のtype Iアテロコラーゲン溶液をキャストした後に乾燥させ、さらにグルタルアルデヒド(GA)により架橋することによりコラーゲンゲル平膜を得た。ゲル膜の微細構造を迷宮細孔モデルで検討したところ、架橋時のGA濃度が膜構造因子に及ぼす影響は少なく、微細構造は変化しないと考えられた。一方、77~96wt%まで濃縮したコラーゲン溶液において製膜を行った結果、架橋時のコラーゲン濃度に依存して拡散透過性が大きく異なるゲル膜を作製することができた。さらに、架橋時のコラーゲン濃度と膜構造因子の間に相関性があり、曲路率により膜の微細構造の均質性を推測できた。したがって、架橋時のコラーゲン濃度により微細構造を制御することができ様々な拡散透過性を持つコラーゲンゲル膜が作製可能である。