抄録
目的:シリコンコーティング膜型人工肺(S肺)は実験的研究において、優れた耐久性とガス交換能を有することはすでに報告した。今回臨床的研究からS肺の安全性および生体適合性を検討した。対象と方法:S肺を開心術時の体外循環に使用した22例を対象とし、ガス交換能、使用上の問題点について検討した。さらにS肺のHPO-25H・C型肺(膜面積1. 8m2)使用のACバイパス症例10例(S群)と生体適合性に優れるといわれるヘパリンコーティング(Durafloll処理)膜型人工肺(膜面積1.6m2)(H肺)使用のACバイパス症例10例(H群)を比較し、生体適合性について検討した。結果:臨床使用ではS肺のガス交換能は終了時まで良好でAir抜きも容易に施行できた。生体適合性の検討では、血小板数、TAT、PIC、Plasma free Hb、穎粒球elastaseとも両群間に有意な差は認められなかった。結語:シリコンコーティング膜型人工肺は臨床にお:いて安定したガス交換能を有し生体適合性に優れていることが示唆された。