抄録
本研究では、成犬を用いて低侵襲でかつ無輸血体外循環が可能な超低体温完全全脳虚血モデルを作成し、その装置の特性について検討し、超低体温時における虚血性神経細胞死について組織学的検討を行った。成犬7頭を用い、大腿動脈に送血管を挿入し、右外頚静脈、右大腿静脈に脱血管を挿入し体外循環を確立した。体温が15℃になった時点で、循環停止せずに超低体温循環を90分行った群をC群、循環停止を90分行った群をT群とした。全例体外循環より離脱し、術後72時間後の組織学的検討では海馬CAl領域にC群では異常所見は認められなかったが、T群では錐体細胞の著明な萎縮が多数認められた。本モデルのように装置の改良、工夫により動物実験における超低体温下体外循環および循環停止実験がより容易に可能となった。超低体温循環停止下においても、循環停止時間が90分では中枢神経に器質的障害が認められることが明らかとなった。