1999 年 28 巻 1 号 p. 191-195
我々は, EDA (+) フィブロネクチン (EDA (+) FN) を選択的に血液から除去するため, EDA (+) FNに高親和性なヘパリンを利用した吸着材料の研究を行ってきた. しかしより選択性の高い材料の開発のためには, ヘパリンのEDA (+) FN認識構造の解明が必要である. そこで本研究では脱硫酸化ヘパリンおよび低分子量化ヘパリンを用い, EDA (+) FNに対する認識構造を検討した. その結果, EDA (+) FNとヘパリンの結合平衡定数 (KA) は脱硫酸化に従ってKA=1×108-1×107M-1と低下したが, 低分子量化に対するKAの変化は見られなかった. 一方ヘパリン結合タンパク質であるアンチトロンビンIIIに対しては脱硫酸化により結合性が完全に消失し, 低分子量化に対してもKA= 1×108-1×104M-1とKAは激減した. 以上の検討から, ヘパリンのEDA (+) FN認識構造は特異的糖配列を必要とせず, また低分子量 (1×103kDa以下) であることがわかった.