抄録
重症左心不全における経大動脈的カテーテル左室ベント法 (TACV) の効果を検討し, 開発したTACV用カテーテルの臨床応用について評価した. 実験的重症左心不全モデルにおけるTACV併用静動脈バイパス (VAB) の効果を単独VABと比較した. TACV併用は単独VABに比べて, 左室一回仕事量, 圧容積面積などが有意に減少し, 左室心筋内ATPは有意に増加した. 特別仕様のTACV用カテーテルはAVR以外の成人開心術5例で体外循環中に挿入され, 全例で安全にTACVが行われ不整脈や溶血等の問題はなかった. TACVの効果として, 経食道心エコー上の左室径の減少と体外循環離脱等の肺動脈圧の低下が確認された. 経大動脈的カテーテル左室ベント法により, 重症左心不全モデルにおいて十分な左室負荷の軽減と左室エネルギー代謝の改善が認められ, 開発した本法用カテーテルは, 臨床例において安全に使用可能であり, 左室径の減少に十分な流量が確保された.