抄録
優れた抗血栓性を示す親水/疎水のミクロドメイン構造をもつブロックコポリマー表面と細胞との相互作用の特性を追求するため, 血小板粘着時の動特性に注目して位相差顕微鏡観察を行った. 特にその高度な親水性により血小板粘着を抑制するポリエチレングリコール (PEG) 固定化表面と比較しながら検討を進めた. ミクロドメイン構造をもつブロックコポリマー表面と接触した血小板は, ポリマー表面上を動く現象が観察された. 接触初期の血小板の動きは, 方向や速度はランダムであったが時間の経過と共に一定の方向に向かうようになった. PEG表面でも接触した血小板の動きが観察されたが, この動きは時間の経過に関わらず, ランダムな動きを続けていた. 予めNaN3で処理し, ATP合成能を阻害した血小板はミクロドメイン表面上での動きが抑制された. それに対しPEG表面では運動の抑制は認められなかった. PEG表面上での血小板の動きはATP合成を伴わないのに対しミクロドメイン表面上での血小板の動きはATPを利用し, 血小板膜の動きに影響するものであることが示唆された.