人工臓器
Online ISSN : 1883-6097
Print ISSN : 0300-0818
ISSN-L : 0300-0818
血栓性素因を併存する開心術症例の検討
抗凝固療法上の問題点を中心に
田辺 貞雄菅野 隆彦小島 勝雄今関 隆雄木山 宏向山 美果也
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 29 巻 1 号 p. 109-113

詳細
抄録

Protein C (PC) やProtein S (PS) の欠乏症はクマリン壊死で知られる血栓性素因である。PC・PS欠乏症を併存する弁置換例3例と一般の単弁置換例17例を比較検討した。血栓性素因例はPC欠乏症2例, PS欠乏症1例で, PC・PS活性50-63%, 家族性あり, ヘテロ接合体と考えられた。両者で周術期の凝固系検査, 遠隔期外来での出血・血栓症歴などを検討した。術後第1病日のTAT, PIC, DD dimerに差はなく, 一般例のPC活性, PS活性は平均81.4%, 60.0%, PC欠乏例のPC活性は50, 53%, PS欠乏例のPS活性は49%であった。外来ではトロンボテスト20%前後を目標にワーファリンを投与している。3例のPC・PS活性は20%以上で, 出血や血栓症はない。PC欠乏症の1例で5年後の末梢動脈瘤手術前にワーファリンを中断したところ瘤内血栓が急速に成長した。PC, PSはvitamin K依存性であるが, ヘパリンは有効で, 体外循環に支障なく, ワーファリン投与下に遠隔期も安定している。

著者関連情報
© 一般社団法人 日本人工臓器学会
前の記事 次の記事
feedback
Top