人工臓器
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PHEMA-PSt-PHEMA ABA型ブロック共重合体表面に対するシアル酸除去リンパ球の超微形態学的評価
阿部 一彦笠貫 宏菊池 明彦岡野 光夫
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2000 年 29 巻 1 号 p. 217-224

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抄録
ポリスチレン (PSt), ポリ (2-ヒドロキシエチルメタクリレート) (PHEMA) -PSt ランダム共重合体表面ではリンパ球のネクローシスを生じるのに対して, 親水/疎水型のラメラ状のミクロドメイン構造を有するPHEMA-PSt-PHEMA ABA 型ブロック共重合体 (HSB) 表面では粘着及び接触リンパ球のネグローシスを抑制する。本研究では, HSB表面のリンパ球のネクローシス抑制機構を解明するために, 細胞形質膜において刺激受容の主要な役割を担っている糖蛋白質のシアル酸に着目し, HSB表面に対するリンパ球のシアル酸を除去した場合の粘着及び接触挙動を, シアル酸を除去しない場合のそれらの結果と対比しながら, 走査型 (SEM) 及び透過型電子顕微鏡 (TEM) 学的解析手法及び画像処理解析手法を用いて解析を行った。シアル酸を除去した接触リンパ球は, 全ての材料表面でシアル酸を除去したコントロールのリンパ球と同様に, 超微形態が良好に保持された球状形として観察された。また, このリンパ球及びこの細胞内小器官のミトコンドリアのTEM像の画像処理解析では全ての材料間で有意差はなかった。さらに, シアル酸を除去した粘着リンパ球は全ての材料表面で球状形として観察された。既報及び以上の結果から, HSBの親水/疎水型のラメラ状のミクロドメイン構造表面は粘着及び接触リンパ球形質膜の糖蛋白質のシアル酸に影響を及ぼさないことにより, リンパ球のネクローシスを抑制することが示唆された。また, HSBのリンパ球のネクローシス抑制には, ラメラ状のミクロドメイン構造表面が大きな役割を果たしていることが考えられた。
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© 一般社団法人 日本人工臓器学会
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